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会長 庭野日鑛 メッセージ
生かされて、生きる。
分かっているつもりでも、本当はわかっていない。そうしたことが人間には沢山あります。
表面的には理解しているようでも、心の底からしっかりと受けとめていない。その最たるものが、
「人生二度なし」とうことでありましょう。
普段、人は、この厳粛な事実を深く見つめることなく、周囲の人々や環境など、
自分の外ばかりに目を向け、不平不満の毎日を過ごしているのが現実といえそうです。
人間は、誰もが老い、そして必ず死を迎えます。
私たちにとって、「死」ということほど確実なことはありません。それを認識することによって
自らのいのちがよく見えてきます。不平不満などいっていられないことに気づかされます。
また人は、「生きる」ということの意味も、本当のことはあまりはっきり分かっていません。
自分一人で、自らの力だけで「生きている」と思い込んでいる人もあります。
しかし人間は、太陽をはじめ、月や星、山や川、数えきれないほど多くの人々、動植物や虫、
微生物や細菌まで含め、一切の恩恵なしに生きていくことはできません。太陽が東から出て、西に沈む。
その単純な繰り返しのお陰さまで、米や野菜が育ち、動物や魚のいのちが育まれます。
それらを頂いて、人間は姓をつないでいます。大きくみれば、太陽も空気も、雨も風も、
私たち一人ひとりを生かそうとして働き、存在していると受け取ることもできます。
いわば宇宙の一切合切が、瞬時も休みなく働いているお陰さまで、私たちは、いま、ここにいる。
「生きている」というより「生かされている」のです。
生き物には必ず死がある―それは、世の中のあらゆる物事が、絶えず変化し流れていて、
ひとときもとどまることがないからです。
私たちは、「生きている」というより「生かされている」―それは、世の中のあらゆる物事が、
それ自体独りで存在するものは何一つなく、相互に依存し合い成り立っているからです。
このことは、仏教の根幹をなす教えであると申せましょう。
釈尊の教えは、宇宙のすべてを貫く真理―真実の道理です。
仏教を信じるか否かにかかわらず、また異なる宗教を信じている人にもあてはまるものです。
決して難解ではなく、分かりやすく、身近なものです。
その真理を認識することによって、人生は変わります。「人生二度なし」ということを自覚した人は、厳粛な気持ちで、いまを精いっぱい生きるようになります。自らのいのちの尊さに気づいた人は、
他の一切のいのちの尊厳に気づき、争いや暴力に走ることはないでしょう。
「生かされている」ことに目覚めた人は、感謝の心で、すべてを合掌・礼拝し、調和・共生を目指していきます。
この世のさまざまな現象は、すべて人間の心のあらわれといわれています。
だからこそ、一人ひとりが思いやりのある平和な人になるよう邁進することを、
何よりも優先しなければなりません。
立正佼成会が進める諸活動の土台、根本は、そこにあります。
庭野日鑛(にわの・にちこう)会長プロフィール 1938(昭和13)年3月20日、東京都中野区に生まれました。立正大学仏教学部、同大学院を卒 業後、本会に入職。布教本部長、学林学長を歴任しました。1991(平成3)年11月15日、法燈継承式で庭野日敬開祖から会長位を継承し、第二代会長に就任。法華経を基盤とした庭野開祖の教えをもとに、常に仏教の大道を正しく歩む教団でありたい、との願いを胸に布教伝道の日々を送っています。 |