【こころの彩時記10】「心の復興みかん」 〜どのような状況におかれても~
- 2017/12/26
- 自分を創る
12月18日、“みかん”がたくさん詰まった一つの大きな段ボールが、今年も仙台教会に届いた。送り主は広島県尾道市に在住で、みかん農家をご主人と営むTさんという一人のご婦人だ。
6年前、Tさんは肺がんを患い、生きる希望と勇気を失いかけていた。そんな失意の底にあった2011年3月11日、東日本大震災が発生した。そんな大災害の中、真剣に、必死に生き抜こうとしている人々の姿をテレビで見ていたTさんの心に、ある一つの思いが込み上げてきた。
「私も生きよう。生きなくてはいけない。東日本大震災で亡くなった人の分まで生きなくては。そして、今必死に生きている被災者の皆さんと共に生きていきたい」
そう心に誓ったTさんは、たとえわずかでもその決意を被災者の皆さんにお届けしたいと思い立ち、震災の翌年の2012年から家のみかん畑でとれた、とびきり上等で特大サイズのみかんを被災者の皆さんに届けて頂きたいと仙台教会に送ってくださっている。
しかも、震災後七回忌を迎えた今年は、3月11日にも送ってくださった。
たとえ自らが生きるか、死ぬかという大病を患っていても、他の人の姿に心うたれ、感謝し、しかも、自分でも何かその人たちの力になれないか?そう思い立ち実践をし続けているTさん。
Tさんからのみかんを手にした近藤教会長は叫んだ。
「これは、心の復興みかんだね!!」
今年も、次のような手紙が、みかんの上にそっと添えられていた。
平成二十九年も残すところ二週間余りとなりました。私はおかげさまで肺がんの手術以来六年と半年が過ぎ、毎日をありがたく過ごさせて頂いております。
皆さまも少しづつお元気になられている事と存じます。少しですが、おみかんを送らせて頂きます。
どうぞ、よいお年をお迎え下さい。
そのみかんは、12月24日に仙台教会道場のご本仏さまにお供えされ、午後にはその「心の復興みかん」は、それぞれの会員さんの手によって、今なお震災で苦しむ人々の一人ひとりの手に届けられていった。
本会の庭野開祖は、次のように述べている。
どのような状態に置かれても、また、どのような人と触れ合っても、常に仏さまのはからいと慈悲をしっかり感受できる信仰者になってほしい。
生きる希望と勇気。それは人からもらい、人に差し上げ、そして人に差し上げ、人からもらう。その限りない循環の中で、人間は生き、生かされているのかもしれない。いや、そうに違いない。
そんな心を忘れずに、2018年という新しい年を迎えていきたい。