“今を大事に、充実して生きること!” 教会長 近藤雅則(平成30年12月)
- 2018/12/1
- 心を創る
『佼成』12月号の会長法話は、「使命にめざめる」がテーマ。
「八正道(はっしょうどう)」の中の「正定(しょうじょう)」について教えられています。「正定」とは、「心が仏の教えに安住していて、周囲の変化によって動揺しないこと」と示されています。私たちは不都合なことや“まさか”の出来事に遭遇するとき、動揺しないではいられません。そして、その原因を他人のせいにしたり、周囲の環境のせいにしたりしてしまいがちです。こうしたときこそ、「正定」が大切だと思います。
すべての出来事は「必要・必然・ベスト」だと言われます。すべての出来事は、自分が向上するために必要なことであり、それは決して偶然ではなく、確かな原因があって現れているのであり(必然)、そしてそれは、自分が人格を高めるために、もっともふさわしいベストの出来事だという意味です。何か不都合な出来事が生じたとき「必要・必然・ベスト」と、“おまじない”のように唱えてみましょう。不思議と心が落ち着き、冷静に行動できると思います。
「なにごとも楽しいと受けとめる-そういうものの見方を心がけていると、気持ちが楽になって、目先の苦に迷うことのない、ほんとうの安楽な人生を歩めるのです。」という言葉が出ています。
「毎日が楽しく生きているか?」と尋ねられ、即座に「もちろん」と答えられないのではないでしょうか。それは、「今を生きていない」と言えるかもしれません。過ぎ去った過去を後悔する。まだ来ない未来について不安を抱く。
日本は世界でもっとも恵まれた国の一つだと思います。にもかかわらず、日本人は、他の国の人に比べて、将来の不安を感じている人が多いと言います。病気になったらどうしよう、事故にあったらどうしよう、親が要介護になったらどうしよう、そして自分も要介護になったらどうしよう・・・と。
そんな人は、今この瞬間に集中してみてください。今この瞬間にどんな不安な状態がありますか?今この瞬間には、不安は存在していないことに気づかれることでしょう。私たちが生きているのは、今この瞬間だけです。過去はもう過ぎ去って、今もうありません。また未来も、想像(妄想)しているだけで、何もありません。
『仏説観普賢菩薩行法経』というお経の中に“一切の業障海(ごっしょうかい)は 皆妄想(もうぞう)より生ず”という句があります。私たちが感じている不安や迷いは、みな実体のない妄想だというのです。
「もし、今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることは本当に自分がやりたいことだろうか?」これは、アップル創業者であるスティーブ・ジョブズの言葉といわれます。仏教は、過去でもなく、未来でもなく、今を大事にし、充実して生きることを教えるものなのです。それも「正定」だと思います。
合 掌
平成30年12月1日
立正佼成会仙台教会
教会長 近藤雅則