民生委員を21年間“させて頂いて” 星 隆(泉西支部所属)
- 2017/3/30
- 地域で創る
民生委員を21年間“させて頂いて”
― 地域住民の“信頼づくり”のために ―
星 隆(ほしたかし、泉西支部所属)
私は現在、満76歳になりますが、昨年の2016年11月末日まで7期(1期3年間)21年間にわたり「民生委員」のお役をさせて頂きました。
民生委員とは厚生労働大臣から委嘱され、それぞれの地域において、常に住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行い、社会福祉の増進に努めさせて頂き、「児童委員」を兼ねています。
お陰さまで、厚生労働大臣さま、ならびに仙台市長さまから「感謝状」を頂戴しました。
今から21年前の55歳の時、地域の皆さまより民生委員に推薦されました。私も母子家庭に育ち、小さい頃に地域の民生委員の方にお世話になった記憶があります。また私は印刷関係の仕事を50年してきましたが、かつてのオイルショックによる経済不況の時など、民生委員さんに相談に乗って頂き、乗り越えてきたという経験がありました。
そんな私が頂いたご恩の“ご恩がえし”を少しでもさせて頂こうと思い、また立正佼成会の庭野日敬開祖の、
「人間は自分ひとりのために生きているのではなく、他の人びと、そして世のために生きている」
というお言葉、精神を胸に、民生委員のお役を受けさせて頂きました。
私が民生委員のお役をしていく中で、まず心がけさせて頂いたことは、人さまに「してあげる」ではなく、人さまに「させて頂く」という立正佼成会の基本的な心構えでした。「してあげる」という心では、こちらが相手さまに対して上からの目線です。ところが、「させて頂く」という心で人さまにふれる時は、自然と相手を尊ぶ気持ちが生まれてきます。そして、何よりも「させて頂く」という心で、地域の人さまのために動かせて頂いた時は、不思議と身体が疲れず、喜びで自らの心が満たされるのです。
かつて、次の出来事がありました。生活保護を受けられていた一人暮らしの中年のご婦人がいらっしゃいました。ある日のこと、その方に届けられた荷物などが外に放置されたままになっていることに気づいた近所の方が、私のところに駆けつけてそのことを知らせてくれました。夕方4時ごろのことでした。
私は何はさておき、すぐにそのご婦人の住宅に飛んでいきました。ドアを叩き、その方のお名前を呼ぶのですが、まるで応答がありません。しかも、ドアも窓も中から鍵がかっているので、家に入ることもできません。
私はすぐに警察に通報すると同時に、鍵屋さんを呼んで鍵を開けてもらいました。すると、中でご婦人が意識を失い倒れていたのです。今度は救急車を呼んで病院に搬送させて頂きました。その時にはすでに夜の7時をまわっていました。心の中でそのご婦人の無事を思い、仏さまを真剣に念じながらの約3時間の出来事でした。
お陰さまでそのご婦人は一命を取りとめました。と同時に、私の21年間の民生委員のお役の中でも、忘れられない出来事の一つとなりました。
現代社会ではどんどんと地域住民の相互の“つながり”、“信頼”が失われつつあります。そのような中、民生委員のお役は退きましたが、地域の皆さまが心から信頼し合い、助け合って、より善い生活していかれるよう、まず私自身が“させて頂く”の精神を胸に、妻と共々にこれからも地域のためにこの身体を使わせて頂きたいと思います。