今月号の「佼成」の会長法話のテーマは、「各自の感謝のしるし-持戒」です。
私たちは生まれたときからずっと、あらゆるものごとの「おかげさま」によって生かされています。ところが、日常そのことに感謝してすごしているかというと、胸を張って「はい」といえる人は少ないかもしれません。天気に文句をいい、家族にさえ「ありがとう」のひとことがいえないという人もいそうです。(10頁1行)という言葉が心に残りました。
皆さんは一日何回”ありがとう”を言っていますか?私は、一日300回を目標にし、皆さんにもそう勧めています。しかし、ほとんど人は、そんなにたくさんありがたいことはないと返答されます。しかし、考えてみてください。11年前の不自由な生活を。
あの時、誰もが生きているだけでありがたいと感じました。朝目がさめること、トイレが使えること、トイレの水が流れること、顔が洗えること、ご飯が食べられること、仕事ができること、学校に行けることなど、あらゆることが当たり前でなく、ありがたいと感じたはずです。「そのありがたさを知っているのは、それをなくした人たちだけ」と言われますが、皆さんは、いまいかがでしょうか?
正しい考え方や生き方を知らずにさまざまな問題をかかえ、ご苦労されている人たちには、ある共通点があるように思います。それは、「おかげさま」という感謝の気持ちがないことです。”我”が強いため、自分を支えてくれているものに気がつかないのでしょう。
戒の原語の意味は、「良い習慣を身につける」ことだそうです。習慣がその人の人格を形成し、人生を決定するといわれます。ですから、「良い習慣を身につける」ことはとても大切なことなのです。私たちは、いま次の三つを良き習慣として身につける努力をしていると思います。
まず一つ目は、「朝夕のご供養」です。これが身についたら立派な信仰者だと思います。どんな状況におかれても信仰がくずれず、人生が脱線しません。自由に活動することができないコロナ禍の今こそ、朝夕のご供養を大切にしていただきたいと思います。
二つ目は、「三つの実践(朝のあいさつを明るくする。呼ばれたら「ハイ」と素直に返事をする。靴を脱いだらそろえ、席を立ったらイスを入れる)」です。教育者として高名な森信三先生はこれを”躾の三か条”といわれ、この三つが徹底すれば、それだけで人間としての軌道に乗ることができると教えています。家庭が人格形成の根本道場です。まず親が実践し、子どもの手本となることが、家庭における最高の教育と言えましょう。
三つ目は、「認めて・ほめて・感謝する」です。これは、仏性礼拝行そのものです。人の欠点を見つけることは、誰でも簡単にできます。しかし、人の美点を見つけることは、こちらの見る目(心)が問われるのです。これが身についたら、心が豊かになった証拠です。
私たちは、悩みや問題があると、それを解決しようと努力します。しかし、どんなに問題に対処しても根本的な解決にはなりません。大事なことは、その悩みや問題を起こしているその人自身のものの見方、考え方や行動のあり方が肝心なのです。それを正しいものにすることで、はじめて悩みや問題が真に解決できるのです。そのためには「良い習慣を身につける」ことです。まさに「良い習慣を身につける」ことは、幸せな人生を約束してくれるのです。
合 掌
2022年4月1日
立正佼成会仙台教会
教会長 近藤雅則