《第1回》教育現場で学んだ「常不軽菩薩」の心と実践の大切さ 嶽内真弘(大嶽山興福寺 住職)

《第1回》教育現場で学んだ「常不軽菩薩」の心と実践の大切さ

奥州鎮護・奥州十番札所 大嶽山興福寺 住職
嶽内真弘

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〇はじめに
『法華経』のとらえ方については、仏教の学者さんやいろいろな宗派の方で違いがあるかと思います。これに対して、私は日常生活の行動の指針として『法華経』のごく一部を読んでのささやかな実践例をお話しさせて頂きたいと思います。
 したがって、一人の僧侶であり、教育者であった私が『法華経』をどう読み、日常生活のよすがとしたかの一例です。
 『法華経』の読み方については、十人十色あっていいと思っています。このたびは、私はこのように読みとり、実践をしたという一例としてお読み頂ければと思います。 

〇小学校でのあいさつ運動
 IMG_0334私が着任した小学校は、農村部の全校児童数が120名程の学校で、転出入が少なく親子三代の家庭が多く、家庭では皆大切に育てられているようでした。それだけに少し覇気に欠ける点や人に依頼する傾向があり、自信の持てない児童が多く見られました。このような状況なので、その小学校では数年前から「やれば出来るんだ」を合言葉のもと実践されていました。
 そこで、私は「挨拶」は誰にでもできるので、全校をあげて「あいさつ運動」を進めようと、教師仲間で共通理解を深め、各家庭では「おはようございます」「行ってまいります」「ただいま」を、地域では「おはようございます」「こんにちは」をするようにしたのです。
 児童には自分たちの祖父母、両親、そして隣近所の人たちのお陰で今あることに気づき、その方々に感謝の気持ちを表すことの大切さを話しました。
 一方、教師には教師の方から児童に「おはよう」と声を掛けてほしいものです。それはあいさつを教えることではないのです。一人一人の児童にはかけがえのない良さを有していることを見つけるためであることを話しました。
 教師から「おはよう」と言って、児童の方から反応が無くても無理にさせることはないのです。まず教師から声をかけることが大切なので反応があるなしは二の次であることを強調したのです。
 私がこのように話したのは常不軽菩薩品の次の語句が背景にあったのです。

「われ深く汝等を敬う。敢えて軽め慢らず。所以は何ん。汝等は皆菩薩の道を行じて、当に仏と作ることを得べければなり」(岩波文庫『法華経』以下同じ)

「仏と作ること得べければなり」を私は児童一人一人が皆かけがえのない良さを有していると解したのです。その良さを認めてやることが教師の役割で、その良さを見つけるために言葉を掛けることが必要なのです。
 教師の一般傾向として、自分の教えたことにすぐ反応することを求める傾向にあり、自分の考えを無理に押しつけようとする面が強いようです。自分があいさつをしたのに、それに反応しない児童に対してなぜしないのだと教えようとする。自分が「おはよう」と言ったのに対し「おはようございます」と返ってくることを求めようとする傾向が強いのです。
 現代の教育方法の一つに「行動目標」という用語があり、教えたことが行動として表れないと指導効果が無いと言われる傾向があり、どうしても効果をすぐ求めようとするのです。
 DSCF8479私は常不軽菩薩品の「当に仏と作ること得べければなり」とは、相手をそのように見ることであり、それは相手が反応しようがしまいが当の本人がそう確信することが重要で、そのように人間を見ることが大切であると『法華経』は教えているのです。
 学校教育でのあいさつは手段ではなくて、相手の人格を認めること、「当に仏と作ること」の出来る一人一人の人格を認めることでありましょう。
 したがって、挨拶とは単に教え込むことではなく、相手が自分はかけがえのない一人であることに気づいていくことだと考え、教師にはそのことを強調したのです。
 児童には、両親、友達、多くの大人たちのお陰であること、自分のことを知っている人、知らない人の区別はなく、多くの人たちのお陰で生活ができていることを伝えて、感謝する心を持って、その感謝を「こんにちは」「おはようございます」という言葉で表現させようとしたのです。
 この小学校は、新しい転入者が少なく何世代にもわたって住んでいる人々の集落で、親たちも親しい間柄ですので、学校のこのあいさつ運動は喜んで迎えられました。
 その中で、都会から実家に帰った人の話で、地区内を散歩していたら、小学生のどの児童からも「こんにちは」と声を掛けられ、すごく嬉しく、自分のふるさとの良さを感じたといっていました。
 このようにあいさつが交わされる地域がいま求められているのではないでしょうか。地域福祉の基礎の部分であるように思います。

 (次回3月更新、第2回に続く)

決定写真11

大嶽観世音「興福寺」山門

六角堂 決定

「六角堂」(市指定文化財)

☆☆ 興福寺さまからのお知らせ ☆☆

大嶽山十一面観世音菩薩

三十三年一会(いちえ)の秘仏開帳

 大嶽山興福寺では、平成二十九年に三十三年一会の秘仏開帳が執り行われます。当寺の秘仏は国宝でもなければ重要文化財でもありません。しかし、日頃地域の皆様方の身近にある文化遺産として地域の人達に慕われてきました。
 開帳は、普段、本尊十一面観世音菩薩は扉の閉まった仏堂の中に秘仏として安置されており、三十三年に一度その扉を開けて参詣に訪れた皆様が直接本尊を拝める機会になります。前回は昭和六十年でした。その時は約二千三百名の方々に奉賛を頂きました。
 今、大嶽山は登米市の観光スポットとして、七月の紫陽花や、市の文化財指定を受けている六角堂、観音堂に施された壁画、中国の孝行譚「二十四孝」などがインターネットで取り上げられております。
 今度の開帳にあたっては、法要以外にもいろいろな催し物や展示物、出店など参詣頂く皆様に楽しく過ごして頂けるよう計画を練っているところであります。
つきましては、三十三年一会にあたった御縁に感謝し、地域文化遺産としての開帳行事に皆様の御参拝を心からお待ち致しております。

一、期 日:平成二十九年七月十五日(土)、十六日(日)、十七日(月・海の日)

二、行 事:法 要 十五日 午前十時 開扉法要、十七日 午後六時 結願法要

 ※この三日間は、午前十時から午後六時まで二時間毎に法要を執り行います。

○催し物: 小学生伝統芸能発表、大嶽山観音太鼓 他

秘仏のお前立ち観音

秘仏のお前立「十一面観音菩薩像」

 

 

 

 

 

 

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