👶第2回「 にんしんSOS仙台」 ~キミノトナリにいるよ~ 東田美香さん(特定非営利活動法人キミノトナリ代表理事)

東田さん 2回目 決定の決定

写真はイメージです。

 さまざまな事情によって、親や友人、あるいは行政などには相談できない妊婦さん方の「にんしんSOS窓口」となり、適切な支援へと結びつける役割を、民間団体として担っていくことを目的として設立された「特定非営利活動法人キミノトナリ」。
 その理念や活動について、同法人代表理事の東田美香さんのお話を掲載していきます。今回はその第2回目です。インタビューアーは、引き続き安藤高子(仙台教会婦人部長)です。

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東田美香さん

【ライン相談を通して】
安藤
 東田さん、二回目のインタビューもどうぞよろしくお願い致します。前回は、『キミノトナリ』の活動内容や、設立の経緯、設立にあたっての東田さんの思いなど聞かせていただきました。ありがとうございます。こちらの窓口には、電話やライン等で、様々な相談が寄せられると思うのですが、今はどういった相談が一番多いですか?

東田
 一番多いのは、生理が遅れているというご相談です。実際に妊娠している方は半分もいらっしゃいません。設立前の想定通り、10代の方からのご相談が一番多いです。特に中高生は、(もし妊娠していたら?)と思うだけで、不安が大きくなります。
 相談者の半分は仙台市在住の方で、次に多いのは、宮城県の仙台市以外の市町村、東北地方、そして、一割くらいが他の地方からです。私たちは、公式ラインを使用していますが、全国的にラインを活用した相談窓口はまだ少ないので、他の地方からも相談が来ています。

安藤
 他の地方からの相談には、どのように対応されているのですか?

東田
 生理が遅れているというだけでは緊急性はないので、基本的にはラインのやりとりで終わります。直接会ってお話ししなければならないのは一割ぐらいです。 

安藤 
 ラインで相談ができるということは、有り難いですよね。誰にも知られたくなかったり、本当に困っている人ほど、声をあげにくい内容じゃないですか。でも、実際に困ったり悩んだりしている方は大勢いるわけで、ラインを使うことで、敷居は低くなりますね。 

東田 
 今の中高生は、ほとんど電話をかけないですよね。電話受付もしていますが、電話は、あまりこないです。ラインでやりとりをした結果、(直接話した方が良いな)と判断した場合、電話に誘導して話したり、直接会って話す場合もあります。

安藤 
 たくさんの方から相談が寄せられると思うのですが、相談員の体制はどのようになっているのですか?

 東田
 現在、相談員11名で対応しています。内容により、助産師、社会福祉士に割り振ったり、面談する時も、私以外、もう一人誰かと行くことが多いです。一人の相談者さんに対して、4人で会いに行ったこともあります。問題が複雑なケースだったので、その時は4人で行きました。

安藤
 その方はきっとものすごく心強く思われ、安心されたでしょうね。

東田
 その方は、継続支援となり、住居探しをはじめ、さまざまな支援をしました。私たちが継続支援する方は、パートナーがいない、頼れる親がいない、住むところもない、という方が多く、ほとんど生活保護につないでいます。生活保護申請が通るような方が、妊娠して危機的な状況に陥る。これは社会構造の問題ですよね。

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写真はイメージです。

【SOSを出すことの大切さを】
安藤
 もし何の支援もないままに出産したら、生活に困窮し孤独になってしまう女性達を、もっと手前の段階で防ぐための取り組みをなさっているのですね。

東田
 そうですね。《孤立した妊婦をつくらないため。孤立した母子をつくらないため》ということですよね。
 今、子ども虐待が深刻な社会問題となっています。虐待はしないとしても、シングルマザーで社会的に孤立し、金銭的にもぎりぎりの生活で、心に余裕がなくなっている方がとても増えています。虐待をする親の多くは、自分自身が虐待や不適切な養育を受けた方です。親に愛されなかったという思いから、愛し、愛される存在が欲しくて子どもを産むのですが、気づくと自分がわが子に虐待をしているというケースが、とても多いのです。

安藤 (自分は虐待を受けたけれども、自分はしない!)とは思わないのでしょうか?

東田
 赤ちゃんが生まれて、最初は本当に嬉しかったはずなんです。やっと愛する存在ができた、愛してくれる家族ができたって。
 でも、子どもが成長するにつれて、イヤイヤ期、反抗期など、自分が思い描いていたものと違う状態が出てくるわけです。(子どもを産めば幸せな家庭をつくれる)と思っていたのに、実際は思う通りにならない。例えば、子どもが泣きやまない、叱っても言うことをきかない。イライラがつのり、つい手を出してしまう。それがエスカレートしていくと、悲惨な虐待につながります。
 ただ、私たちは、相談者さんに、産んだ方がいい、産まない方がいいというジャッジ(判定)はしません。あくまでもご本人の意思を尊重します。ご本人の希望で(産みたい)となった場合、一人で子育てする大変さと同時に、SOSを出すことの大切さを伝えています。

安藤
 SOSを出すって大切なことですね。親や兄弟など誰にも言えず、苦しいけれども、どこに相談すればいいのかわからないで悩んでらっしゃる方も多いと思います。

東田
 そうですね。保健師さんが訪問した時に、家に入れてもらえない場合もありますよね。児童相談所の職員が、「家に行ったけれど会えませんでした」と言っている間に、子どもが虐待死していたという事件もあります。
 ですから、私たちが関わる妊婦さんには、
「今、あなたは一人だから、誰の力を借りなくても大丈夫かもしれないけれど、赤ちゃんが生まれたらそういうわけにはいかない。赤ちゃんが無事育っていることを確かめるために、保健師さんや児童相談所の方が訪問した時には、必ず会わなければならないよ。困った時には抱え込まずに、私たちや行政の人に助けを求める、と約束してくれるなら、全面的にサポートするよ」
とお話しをしています。
 虐待死にまで至ってしまうというのは、助けてくれる人が周りにいなかったケースが多いですよね。あるいは、いるんだけれど、相談できなかったというケースもあって、自分の弱い部分を見せられない人もいます。明るいことは言えるけれども、(もう限界なんです。助けて!)という声をあげることができない。(自分は息抜きに行きたいから、その間子どもを見ていて)ということは、母親として悪だと思ってしまい、言えないでいる。そして、子どもを置き去りにするという事件が起きています。
 私たちはそういう事例から学び、「息抜きをしに行ってもいいんだよ。その間、子どもを絶対に置き去りにしないで、預けてね」というスタンスで取り組んでいます。
 昔だったらごく普通にあったような、隣近所の助け合いがあれば、悲惨な虐待事件は起きないのではと思います。高度経済成長後、地域コミュニティが壊れてしまった結果、孤立した母親、家庭が増えています。マンションの1室で、子どもと1対1で向き合わなければならないような若いお母さんがいるという現状を変えるために、もう一度地域コミュニティを、現代に合った形で活性化できないものかと思っています。

【自ら決めて生きていく・・・そしてあなたの隣にいるよ】
安藤
 予期せぬ妊娠をされた方の、その時だけの相談ではなく、その後の支援も長期的に見据え、その方の人生そのものを応援されているところが本当にすごいなって感じます。11名のメンバーの方々は様々なご職業の方がいらっしゃると思うのですが、相談者に対し、共通して大切になさっていることはどんなことですか?

東田
 一番大切にしていることは自己決定です。
 私は、最近、社会福祉士の資格を取ったんですが、社会福祉士の教育の中で、支援者と被支援者の非対象性を考えるように言われます。非対称性とは、支援する側が優位に立ち、そんなつもりではないけれど、押しつけになってしまったり、上に立ってしまったりということです。
 また、濁流にのみこまれている人がいる時に、そこに飛び込んでいくのは支援者のすることではない。自分は安全な位置にいて、自分の周りに協力者を集め、縄を投げて、みんなで引っ張って溺れている人を助けるのが支援者のやることだよ。そのような例えも教えてもらいました。
 あとは“伴走”ということもよく言われました。その人の人生の主役はその人なんだから、けっして支援者が主役になってはいけない。妊娠して悩んでいる女性に対して「産んだ方がいいよ」と言って、全部助けてあげるねっていうのは違うと思っています。
「産むか、産まないか」、「自分で育てるか、育てないか」というところは、とにかく相談者さん自身で決めるしかなくて、私たちはその相談者さんが決めたことを、いかに支えるかっていうことですよね。

安藤
 なんだか、この『キミノトナリ』というネーミングが、ものすごく物語っているように感じました。私はあなたの隣にいるよ、何でも言ってね、でも、決めるのはあなたなんだよっていうことなんですね。

東田
 くみ取っていただいて、ありがとうございます。
 私は今、好きで、たまたまこういうことをしていて、たまたまあなたと巡りあえて。それは、あなたが勇気を出して連絡してくれたからであって、別に私たちの手を振りほどく権利もあなたにはあるけれども、一緒にいてくれるから、まぁ、楽しくやっていこうよ、というスタンスなんですよね。
 それ以上の押しつけになっても、今の子はすごく敏感なので去られてしまいますし。多分、私たちが継続支援している方と一緒にいるところを見たら、こんなにフレンドリーなんだってびっくりされると思うんです。
 本当にバカみたいな話をしてゲラゲラ笑ったりとか、そういう感じなんですよね。ですからいわゆる、「支援している人」と「支援されている人」っていう関係性には見えないと思います。

安藤
 とっても大切なことを教えて頂きました。相談に来られる人も、相談を受ける人も、そして私も、みんな尊い“いのち”をもった、まったく平等な存在ですものね。
 次回もたくさんのことをお聞かせください。よろしくお願いします。

※次回はいよいよ最終回。2月1日に更新予定です。

【特定非営利法人キミノトナリ】
〇お問合せHP:https://kimitona.net/

決定写真3

決定写真4

【キミノトナリの活動】
〇「にんしんSOS仙台」相談窓口(電話・メール・SNS)
〇病院や役所への同行支援
〇協力機関との連携
〇包括的性教育の促進
〇特別養子縁組制度の普及・啓発
〇講演・性教育出前授業
〇レギュラーラジオ番組『キミトナラジオ』(エフエムたいはく・毎週水曜22時~22時30分)

【東田美香さんプロフィール】
宮城県第一女子高等学校卒
上智大学文学部教育学科卒
東北大学法科大学院修了(法務博士/専門職)
現在、以下の要職にある。
特定非営利活動法人キミノトナリ 代表理事
NPO法人ほっぷすてっぷ 理事
子ども虐待防止ネットワーク・みやぎ(キャブネット・みやぎ)相談員・広報部長

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東田美香さんと安藤教会婦人部長

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