今月号の「佼成」の会長法話のテーマは、「お金を貯める。お金を使う-布施②」です。すごくストレートなテーマでちょっと驚きです。
「四分法」というお釈迦さまの教えがあるそうです。収入の四分の一は、将来の備えとして貯蓄しなさいというものです。仏教は布施ばかりを説いていると思っていましたが、お釈迦さまの教えは、このように現実的で実生活にマッチしていると感じます。
また、仏教ではお金を儲けることを否定していると考えがちですが、そうでもないようです。鈴木正三(江戸時代の僧侶)は、「何の事業も皆仏行なり」と説いています。出家や厳しい修行をしなくても仕事に精励することが仏の道という意味です。仕事に励むことで社会に貢献し、得た収入で家族を養う。さらに得た利益は社会に還元する。また、仕事を通じて心を高め、人間的に成長することは立派な仏道修行ということです。正しい仕事によってお金を儲けることも、仏道にかなったことと言えましょう。
しかし、やみくもに儲けて貯めることを認めているのではありません。“仏教では「財を得ては多くの人びとのために恵む人」が称賛されて、もの惜しみの心を捨ててわかちあうことの大切さが強調されているのです。どれほど富を得て、財を蓄えても、その財を「自分ひとりが持っていたのでは死んでしまう。それを『布(し)き施(ほどこ)す』」ことで財が生きる、それが「布施」本来の意味”(12頁末行)とあります。
お金を含め、すべてのものは神仏からの預かりものであり、自分の所有物ではありません。どんなに苦労して稼いだとしても、それを多くの人のために役立てるよう神仏から預かっているのだと受けとめたらどうでしょうか。
”これからの世界秩序や人類の未来を考えるとき、鍵となるのは「利他主義」だといいます”(13頁末行)。残念ながら、今私たちの住んでいる世界は、とても歪んでいます。日本は、近年所得格差が広がっているそうです。今後ますます貧富の差が大きくなり、貧しい人はいっそう貧しくなっていくというのです。世界ではさらに格差が大きく、1割の富裕層が8割の富を所有しているという報告があります。このような不公平な世界には、仏教の「利他の精神」が不可欠です。その意味でも、仏教は人類の未来を救う重要な鍵と言えます。
本会の使命は、”わかちあう利他の精神”を世界に広げていくことだと思います。私は、この「利他の精神」を社会にも広げるため、宮城県に「一食を捧げる運動」を提案したことがあります。この運動は、一食を抜き、抜いた食事代を貧困に苦しむ人たちに献金しようというものです。自らも空腹を味わい、苦しみを共感するというもので、持てる者が持たざる者に施す行為とは全く異なります。
あの大震災から11年が経ち、現在では、「こころの復興」が強調されています。「こころの復興」とは、単に傷ついたこころが癒されて元気を取り戻すことだけではないように思います。他者のために少しでも役立とういう「利他の精神」を持つことが、真の「こころの復興」ではないかと思いますが、皆さんはどう思われますか。
合 掌
2022年2月1日
立正佼成会仙台教会
教会長 近藤雅則