今月のご法話は、「欲ばりは煩(わずら)いのもと」です。
物やお金がたくさんあればあるほど幸せだと感じ、「もっと、もっと」と欲望を募らせている人が多いと思いますが、皆さんはいかがでしょうか?
“釈尊は「いろいろな欲望を貪り求めると、諸々の煩悩が彼に打ち勝ち、危ない災難が彼を踏みにじる」という表現で、貪るほどの欲深さがいかに身心にダメージを与えるかを教えてくださっています”(11頁2行)
一方、私たちが生きていくためには、ある程度の欲望は必要です。まして若い頃はもっと発展したい、もっと向上したい、もっと豊かになりたいといった挑戦的な目標や夢をもつことは大事です。要は、その欲望をしっかり制御し、支配されないことです。
では、どうすれば欲望に支配されずにすむか?その答えが次の言葉です。
“私たちはときに欲望に歯止めがかからなくなります。それゆえ利他の心を忘れずに欲望をほどほどに抑える日ごろの精進が欠かせないのです。(12頁終3行)
“欲望をほどほどに抑える日ごろの精進”とはどんなことでしょうか?佼成会に入会すると、「まず人さま」ということを教えられます。自分の悩みや問題は後回しにして、先に他人の悩みや問題を心配します。また、本会の修行のすべては、自分の時間やお金のほか、都合も仏さまに差し出すことと言えます。仏教では、こうした行為を布施行と言い、欲望に支配されない心をつくるための実践行にほかなりません。
皆さんの中には、布施行を行い、欲望を抑えることで、本当に幸せになれるのか疑問を感じる人があるかもしれません。大丈夫です!今与えられている物やお金に感謝し、それを無駄なく生かして使うこと。そうすれば、無理に求めなくても、必要な分だけの物やお金がこちらに集まってくる世界があるのです。まさに“道心の中に衣食あり 衣食に中に道心なし”(伝教大師の言葉)です。
この地球の水や空気、石油や鉱物などの資源は有限です。それを人類は奪い合い、争っています。また、大量生産・大量消費の経済活動は地球を破壊し、汚染し続けています。こうした行為は、必ず大きな被害を私たちにもたらすことでしょう。それをあらためる生き方が、「少欲知足」(欲を抑えて足ることを知る)です。この生き方が今や地球を救う道であり、人類共通の生き方にならなければならないと思います。皆さんはどう思いますか?
合 掌
2023年9月1日
立正佼成会仙台教会
教会長 近藤雅則