ユニセフ本部 アンソニー・レーク事務局長さまからのメッセージ
- 2017/1/1
- 平和を創る
1979年の『国際児童年』以来、立正佼成会はユニセフを通じて「一食を捧げる運動」を基軸に、教育が受けられない子ども、貧困・紛争・病気に苦しむ子どもの支援を続けてきました。
2015年からは「母と子のこころとからだに栄養を」をテーマに、リベリア、シエラレオネにおける世界宗教者平和会議との子どもの保護事業、グアテマラの「はじめの1000日」キャンペーン等を通じた、ユニセフの栄養習慣改善事業、並びに緊急事態が発生したばあいの救援活動を支援しています。
そこで、このたびアメリカ・ニューヨークにあるユニセフ(国際連合児童基金)本部の責任者であるアンソニー・レーク事務局長さまから頂いた「メッセージ」をご紹介いたします。
はじめまして、私はアンソニー・レークと申します。ニューヨークにあるユニセフ(国際連合児童基金)本部の責任者として事務局長を務めております。
このたび、世界の子どもたちが置かれている現状とユニセフの活動について知っていただきたく、このメッセージを送らせていただきました。
ユニセフは、世界の子どもたちを守るため国連によってつくられた人道支援機関です。ユニセフのスタッフは、190の国と地域で栄養不良や病気、紛争や災害に苦しむ子どもたちの命と権利を守る活動をしています。
もう、泣く力もなく、息の浅いクラシャを抱いて、お母さんは祈るような気持ちで、先を急ぎます・・・
ケニアの乾いた土ぼこりの道をずっと歩き続け、やっと栄養治療センダーにたどりついたとき、3歳の女の子クラシャは、生死の境をさまよっていました。重度の栄養不良のうえに、何日も下痢がとまらず脱水症をおこしていたのです。スタッフはただちに緊急治療を開始しました。毎日根気よく治療をつづけ、1週間たった今、クラシャはようやく、おもゆをすすれるまでになったのです。
センターには今日も、クラシャのような子どもが次々と運び込まれてきます。ここにたどり着く前に力尽き、お母さんの腕の中で息を引き取った赤ちゃんもいます。
ユニセフのスタッフは、こうした子どもたちを毎日のように目にしています。自分ではどうすることもできない状況に置かれ、短すぎる生涯を閉じる子どもたち―
2015年、5歳を迎える前に亡くなった子どもは推定590万人にのぼります。
そう、世界では今この瞬間も約5秒に1人の・・・つまり、けさ目覚めてから明日の朝再び目覚めるまでに、1万6000人の幼い子どもが命を落としてしまうのです。またその陰には、その何倍、何十倍もの「瀕死」の子どもたち― 高熱にうなされる子ども、栄養不良で生死の境をさまよう子どもなど― がいるということも忘れるわけにはいきません。
では、何が子どもたちの命を奪っているのでしょうか?
生れたばかりの赤ちゃんの死。新生児ケアの問題です。
たとえばバングラデシュでは、5歳未満の子どもの死の62%が、生後一ヵ月の間に起こっています。母体の栄養が足りないため、未熟児として生まれてきてしまう赤ちゃんがとても多いのです。また、大半の母親が保健施設以外の場所で出産しているため保育器もなく、免疫力のない赤ちゃんはさまざまな病気で亡くなってしまいます。
栄養不良の子どもを襲う感染症。
昨年、5歳まで生きられずに命を落とした子どもの数は590万人にのぼると推計されています。死因のほとんどは、肺炎、下痢性疾患やマラリアなどの予防可能な病気です。ことに栄養不良の子どもたちは、身体の抵抗力が弱く、感染症にかかりやすくなります。
肺炎のはじまりは、咳や頭痛などちょっとした風邪の症状です。
肺炎は、世界中の幼い子どもの命を最も多く奪っている感染症です。予防接種や早めの抗生物質の投与で予防や治療が可能ですが、気づいた時にはすでに手遅れというケースが後を絶ちません。実際、世界では、肺炎にかかった子どもの4割近くが治療を受けられず、乳幼児死亡全体の15%にあたる920万人が犠牲となっています。
この他にも、助かるはずの理由で命を落としてしまう子どもたち。どうすれば救うことができるでしょう?
子どもたちの命を救う方法を、ユニセフは知っています。
お母さんのおなかにいるときが肝心。
生れる前の赤ちゃんは、お母さんが摂る栄養だけが頼りです。母体に必要な鉄分や葉酸を配ったり、破傷風の予防接種を実施したりすることで、元気な赤ちゃんの生まれる確率が大幅にアップします。また、HIV(エイズ)の母子感染率も、薬の投与と適切なケアで下げることができます。
赤ちゃんが生まれたら、まず母乳育児。
お母さんのお乳は、肺炎や下痢による死亡から赤ちゃんを守ります。母乳で育った子どもは、母乳を与えられなかった子どもより生存率が飛躍的に高まるというデータも出ています。1袋わずか8円のORS(経口補水塩)には、下痢による脱水症状を大きく和らげる力があります。蚊が媒介するマラリアは、殺虫処理を施した蚊帳(かや)を正しく使うことで、サハラ以南のアフリカ地域でマラリアによる幼い子どもの死を推定55%減らすことができます。
感染症を防ぐ予防接種。
たとえば、子どもの命を奪う感染症のはしかは、1回分約34円のワクチンを適切な時期に2回接種するだけで予防することができます。また予防接種の実施によって、年間200万〜300万人もの子どもの命が救われ、数えきれない子どもたちを病気やその障害から守っています。
ユニセフが今積極的に取り組んでいる効果的な活動があります。それは、今回ご紹介したような低コストな方法を、ばらばらに行うのではなく、組み合わせて1つのパッケージにしたもの。村のお母さんたち、ボランティアの保険員、治療センターのスタッフなどと協力して実施します。
こうした総合的な活動は、たとえば西アフリカのセネガルでは、過去15年間で乳幼児の死亡率を65%削減することに貢献しました。
ユニセフのパッケージ方式の支援が実施できている地域は、今のところまだ限られています。世界では、ひん発する自然災害や紛争、貧困などの影響が、最も弱い立場の子どもに重くのしかかり、今この瞬間にも、何百万人もの子どもたちが病気や空腹に苦しんでいるのです。
世界に助けを求める子どもがいるかぎり、ユニセフは活動をつづけます。
みなさまのご支援があれば、子どもたちの栄養不良を改善し、感染症から子どもたちを守ることができます。そして、子どもたちが健康になり、学校に通い、いつの日か自分の力で未来を切り開くことができるようになるのです。
どうか、ユニセフと一緒に世界の子どもたちを守っていただけないでしょうか?みなさまからのあたたかいご支援を、心よりお願い申し上げます。
ユニセフ(国際連合児童基金)
事務局長 アンソニー・レーク
追伸:今も約5秒に1人、かけがえのない、幼い命が失われています。みなさまのご支援を重ねてお願い申しあげます。