復興住宅に機関誌『佼成』をお配りして 加藤裕章(南支部)

仙台教会南支部所属の加藤裕章さん(63歳)は、平成26年春から現在に至るまで足掛け3年にわたって、東日本大震災で家屋を失い、仮設住宅や復興住宅での生活を余儀なくされている人たち一軒、一軒に、優しく声を掛け、機関誌『佼成』をお配りしてきている。今回は、気さくで、豪快な笑顔と作務衣がトレードマークの加藤さんと一緒に、亘理町に建設された復興住宅に文書布教をさせて頂きながらお話しを伺いました。

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支部の主任さんと文書布教に歩く加藤文書主任さん(向かって右側、後方は復興住宅)

聞き手:このお役をされるようになったきっかけを教えてください。

加藤さん
 私はJR関連の仕事を45年間勤めて定年を迎えました。また、5年前に家内を病気で失い、心がからっぽの状態で何もできずにいた私のところに、支部の先輩で当時、文書布教主任をしていた相原正義さんが訪ねてきてくれました。
相原さんは、
「加藤くん、たまには支部に遊びに来いよ」
と声をかけてくださいました。せっかくのお誘いのなので、南道場に行ってみると、
「今、仮設住宅に『佼成』をお配りしているけど、ちょっと手伝ってくれよ」
と相原さんに頼まれ、相原さんのお手伝いということで始まったのがきっかけです。ところが、すぐに相原さんが地区主任さんになられたので、私がそのあとを継いで支部の文書布教主任のお役を頂き、今日まで続けさせてもらっています。

聞き手:今日も復興住宅の方に『佼成』をお配りしていますが、毎月されているのですか?

加藤さん:はい。主に毎月28日に『佼成』をお配りしています。だいたい120軒のお宅に支部の方にもお願いして、必ず月1回、抜けることのないよう回らせて頂いています。被災された方が一番苦しかった時、仮設住宅を回らせてもらい、『佼成』はもちろんのこと、こんな私のことでも、毎月、待っている方がいらっしゃいました。そんな人たちに、
「仮設住宅から復興住宅に移っても、必ず『佼成』を届けるからね。住宅ができたらいくからね!!」
 そんな約束をしましたから、私はぜひこの約束を守り続けたい、そう決心しました。

聞き手:今、布教をされているお姿を見ていますと、復興住宅のインターホンを押されたあと、何の応答がなくてもかなり長い時間その場で待たれていましたけど、どうしてなのですか?

加藤さん:私はインターホンを押したあと、必ずしばらく待つことにしています。それは、そのお家の方がお年寄りだったり、お身体が不自由な方だったりします。また、その日は、風邪などをひかれて横になP1030681られているかもしれませんし、何か手の離せない家事などをしているかもしれません。そういった方は、インターホンに出たくても、すぐに出られませんよね。それで、しばらく待つことにしています。3年間させて頂いてきて、こんなことがありました。インターホンを押してしばらくたっても返事がないのでお留守かと思い、
「今日は、有り難うございました。また来ますね~」
と言って、ドア越しで合掌して帰らせて頂こうとしたところ、
「また、来てくださいね」
というご婦人の声がドアの向こうから返ってきたのです。その方に、お会いすることはできませんでしたが、私の声、私の姿をちゃんと見ていてくれたのだなと涙が出るくらい嬉しかったです。

聞き手:たとえ留守のお宅でも、帰る際にはちゃんとお声をかけ、お礼を言って、そして合掌されているのですね。

加藤さん:はい、そうです。私がこのように開祖さま、会長先生のお徳が詰まった『佼成』をお届けさせて頂けるのも、相手の方がいてくださるお陰さまです。そのお陰で私もお役をさせて頂けるのです。
P1030682 先日も、こんなことがありました。あるお宅に『佼成』をお届けしましたが、お留守でした。そして翌月もお留守でなかなかその復興住宅の方とお会いできません。なんとか一目お会いしたいと思い、また翌月行かせて頂くと、そのお宅の一人暮らしのご婦人とお会いすることができました。その時、私が驚いたのは、ずっとお留守であったはずなのに、
「加藤さん、会いたかったよ!!」
と言ってくださったのです。そして、震災後の辛い思い出や、今の寂しい心境を私に話してくれました。その方は、人に会えないほどのキズを心に負っていました。しかし、毎月、毎月、お声かけをさせて頂いてきたことは、絶対に間違いなかったと心から思わせて頂きました。
   飛び込みでの布教に歩かせて頂いていて、たとえお宅の方がいらしても、いらっしゃらなくても、あるいは『佼成』を受け取ってくださっても、受け取ってくださらなくても、私にとってはすべて一緒です。こちらがどれだけ相手の方を思い、拝ませて頂けるか、その一点が私の修行だと思わせて頂いています。

聞き手:最初からそんな思いで歩かれていたのですか?

加藤さん:いえいえ、決してそんなことはないです。最初は出てきてもらえないと、
(何で出てきてくれないんだろう)
と思い、断られると
(せっかく『佼成』という尊い本をお持ちしたのに)
という相手を責める思いが沸いてきていました。しかし、相手の立場に立ってみれば、最初は見ず知らずの人が来るわけです。「何をしに来たのだろう?」と思うのは当然のことですし、私が訪問することで相手の貴重な時間を頂戴するわけです。そう思えた時、インターホンに出てくれるだけで有り難い、たとえ『佼成』を断られてもお会いできたことが嬉しい、有り難いと思えるようになれました。
 P1030696これは不思議なことなのですが、断られても、断られても、毎月、訪問させて頂いていると、いわゆる「顔見知り」になれるんです。いったん「顔見知り」になると『佼成』の受け取りは断られても、
「お元気でいてくださいね。また来ますね~」
というと、ほとんどの方がまた来ることは断らなくなるんです。
 ですから、必ずお宅を訪問した時には、
「こんにちは。立正佼成会の加藤です」
と、しっかりと自らを名乗り、
「お元気でしたか?お変わりありませんか?」
と相手を気遣わせて頂き、
「『佼成』をお持ちしました。ぜひ読んでくださいね~。また来ますね~」
と来訪の目的を話して、次のお約束をさせて頂いています。
 これらの言葉だけは、たとえ相手がいても、いらっしゃらなくても、必ずお声かけしていきたいと思っています。

聞き手:加藤さんのこれからの夢を聞かせてください。

加藤さん:亡くなった家内から言われた言葉があります。
「布教は、相手の痛みがわかなくてはだめよ。お父さんが私を好きになってくれ、一生涯、愛し、大切にしてくれたように、まずこちらから相手の人を好きになっていかないと」
 これからも、亡くなった家内と私の「同行二人」。毎月、明るい笑顔を忘れずに、この文書布教を続けていきたいと思います。P1030738

南道場の法座席で橋浦支部長さん(向かって中央左側)のご指導を頂く加藤さん

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