生涯を「ボランティア」に捧げて 伊藤悦子(東支部)
- 2016/11/29
- 地域で創る
◇ボランティアという言葉の意味を教えて頂いて
私は今年で74歳になりますが、38年間、ボランティアを続けて今日があります。その間、「みやぎボランティア友の会」の会長をさせて頂き、また10年前から「民生委員」のお役をさせて頂いてきています。
ボランティアを始めるきっかけとなったのは、今から約40年前、娘が通っていた小学校のPTAの会合に、宮城県社会福祉課の当時の課長さんが講演をしてくださった時の言葉が私の胸に響きました。それは、
「ボランティアとは、自分ができることを人さまのため、世の中のためにさせて頂くことです」
という言葉でした。
私の父方のご先祖さまは、明治維新後、北海道函館にある五稜郭の周囲でお米を作り、それを困っている人に分かち合うといった活動をしたり、お国のために新米を献上したりなど、明治天皇陛下から表彰状を2回も頂くほどでした。
そんな話を聞いて育った私は、(いつかは人さまのため、世の中のために何かさせてもらいたい)と心の中で思うようになっていました。
私は社会福祉の課長さんから、近くにある「宮城県乳児院」を紹介して頂き、早速、見学に行かせてもらいました。すると、私と同年代の人や年上の人など、額に汗をかきながら乳児が使う「おしめ」や衣類などを縫ったり、繕ったりなどしている姿に感動しました。
(よし、私もさせて頂こう)
とその場で決心した私は、すぐに県乳児院でボランティアをしている「県乳児院グループ」に入らせて頂きました。
今思えば、ボランティアに捧げる私の人生がスタートしました。
◇現在の幸せ
しかし、当時、三十代の私に悩みが一つだけありました。それは、主人の兄の「アルコール依存症」でした。たまたまその悩みを親身に聞いてくれたのが、同じボランティアサークルの先輩であった中鉢さんという方でした。中鉢さんは立正佼成会の会員でもあり、それがご縁で立正佼成会に入会しました。
「あなたが、アルコール依存症で苦しまれている山形に住むご主人のお兄さんの分まで、人さまのためにさせて頂きましょう」
という、当時の佼成会の幹部さんのお言葉を頂き、仙台教会では中鉢さんと一緒に若い男女がより善き結婚ができるよう〈良縁づくり〉をさせて頂くお役を頂戴しました。
お陰さまで、その後、義兄のアルコール依存症も治り、また現在、主人と毎朝一緒に仏さま、ご先祖さまにお経をあげ、ご供養をさせて頂ける幸せな境遇にならせて頂きました。これは主人と私にとって大切な日課であり、修行であり、また喜びに溢れた至福のひとときです。私は主人の隣でお経を上げさせて頂いたあと、(今日も一日、少しでも人さまのためにお役に立てますように)と仏さまに祈り、念じさせて頂いております。
◇この世に生まれてきたお役とは
さて、私は三十代後半から、ボランティアにこの身を捧げる新たな人生が始まりました。私たちのボランティアグループが行かせて頂く施設は、身寄りのない乳幼児を預かっている施設です。活動としては月に1回、施設に行かせて頂きますが、その前後の準備やボランティアグループ維持・発展のための活動、そして私たちのグループが所属する「みやぎボランティア友の会」の運営や広報活動など忙しい日々が続き、あっという間に気が付けば38年間が過ぎていました。
その間には、副会長を4年間、会長を3年間勤めさせて頂いた「みやぎボランティア友の会」が、構成メンバーの高齢化により2013年(平成25年)創設39周年をもって解散という、たいへん辛い出来事もありました。
しかし、ここまでボランティア活動に取り組んでこれたのは、仲間の中鉢さんに導かれて入会した立正佼成会の庭野開祖さまのみ教えが私の心の支えとなっていました。それは、
「人さまに喜んで頂くことをさせて頂く。それが、私たちがこの世に生まれてきた大きなお役である」
という庭野開祖さまの教えの根幹です。ですから、人さまのためにさせて頂くことが、少しも苦ではありませんでした。
「どうしてそんなにボランティアに打ち込むのですか?」
といろいろな人からよく聞かれました。しかし、
「私にとって、それは喜びであり、人さまのためにさせて頂くこと自体が人生の楽しみなんです」
といつも答えさせて頂いてきました。
◇民生委員として
そんな私の姿を見て、町内会では婦人部長のお役、そして自治会の副会長といったお役を頂戴し、十年前から町内会長さんのご推薦で「民生委員」のお役も頂戴しました。
私は民生委員のお役を頂き、一人暮らしのご高齢者のお宅、母子家庭のお宅、経済的に困窮されているお宅など、町内を一軒一軒、できる限り訪問させて頂き、いろいろな相談に乗らせて頂いてきました。
特に、「何かあったらすぐに電話をくださいね」と言って、電話番号をお伝えしてありますので、昼、夜、構わず電話がかかってきます。特に昼間に働いているお母さんが多いので、子供のことでの相談など夜間に電話がかかってきます。そうすると、家事の途中でも、食事の途中でも、そのお宅にすぐに行かせて頂き、お話を聞かせてもらいます。
庭野開祖さまから、そのご法話を通して「人さまの良いところを見つけて、褒めてあげなさい」と教えて頂きました。なぜなら、「人間は皆、尊く、素晴らしい《いのち》を持っている」からといえましょう。
ですから、私はどんな状態のご家庭に行かせて頂いても、必ず良いところ、素晴らしいところを見つけ、褒めてあげ、そして励まさせて頂いております。 ともすると、(相手は困っている人。私は相談にのってあげる人)といった具合に、上からの目線で相手を見てしまいます。しかし、困っているその人も、尊いいのちを持った人と拝ませて頂ける。これも、庭野開祖さまの教えのお陰さまです。
◇人さまのため、世の中のために
私もこの年齢になり、今年いっぱいで民生委員のお役を降りることになっています。また、私が所属する「県乳児院グループ」も今年11月で活動を終了いたしました。その理由は、ボランティアをさせて頂く自分たち一人ひとりと、そして家族が高齢化し、自分が面倒をみてもらったり、家族の面倒をみなくてはならなくなったりといったことでした。
しかし、私のボランティアにかける思い、情熱は、まったく変わりません。今も町内で救急車が呼ばれたら、真っ先にそのお宅に行かせて頂き、そのご家族のお手伝いをさせてもらったり、私の今までの経験からさせて頂けることをしております。
また、立正佼成会の東支部で行っている高齢者の福祉施設へのボランティアにも、今後さらに力を入れて参画させて頂きたいと願っております。
今までのボランティアを通して、たくさんの笑顔にふれてきました。その皆さんの笑顔が私の財産であり、その方たちがいてくださったからこそ、ボランティアをさせて頂くことができました。本当にお陰さまで、感謝の心でいっぱいです。これからも、このいのちある限り、「人さまのため、世の中のため」という心でご奉仕させて頂きたいと思います。
合 掌