〈ホームレスの皆さんに温かな真心を伝えたい〉「仙台夜まわりグループ」溝口美貴

ホームレスの皆さんに温かな真心を伝えたい

できるときに、できることを、できる人が

NPO法人「仙台夜まわりグループ」ボランティアスタッフ
溝口美貴

 2016年6月に発表された厚生労働省による「全国ホームレス概数調査」では、宮城県内の路上生活者は104名、そのうち仙台市内では102名という結果が公表されました。
 また、実態の把握が難しい移動型のホームレスや、自動車やネットカフェなどを住まいにする方を含めると、その数はさらに増加するといわれています。
 今回はそのようなホームレスの方々に対し、NPO法人「仙台夜まわりグループ」の相談員として、献身的なボランティア活動を続けていらっしゃる溝口美貴さん(仙台教会 多賀城支部所属)にお話しを伺いました。

お顔写真(決定)

溝口美貴さん

◇「仙台夜まわりグループ」とは
 主に仙台駅周辺のホームレス(路上生活者)の方の支援活動をしているNPO法人「仙台夜まわりグループ」の溝口美貴です。私たち「仙台夜まわりグループ」は、2000年1月から仙台市内での路上生活者支援活動を行ってきております。
 例えば、仙台駅を中心とした夜まわりでは、路上でやすんでいるホームレスの方に、「お変わりありませんか?」、「お腹はすいていませんか?」、「何かお困りのことはありませんか?」と一人ひとりにお声をかけて回ります。暖かいお味噌汁や軽食などをお渡しし、もし体調が悪い人がいればできる限りの支援をさせて頂きます。
「仙台夜まわりグループ」は、現在、理事長を務める今井誠二さん、事務局長の青木康弘さん、青木淳子さんによる3名で活動がスタートしました。当時、仙台市内に確認させて頂けるだけでも、300人にも及ぶ路上生活者の方がいました。
 青木事務局長さんから、次のような話を聞きました。ある晩、ホームレスの一人の方に声をかけたところ、「体調が悪いんです」という返事でした。青木事務局長さんは、「分かったよ。明日、病院に連れていってあげるよ」と約束し、翌朝にそのホームレスの方に会いに行ったところ、すでに亡くなられていました。その姿を見て、「この人の死を無駄にしては絶対にいけない。本気になって支援をさせて頂こう」。青木事務局長さんは、そう心に誓われたそうです。
 現在では、ボランティアの皆さん約30名で力を合わせて、「夜まわり」活動(月2回、仙台駅周辺)、「カレー炊き出し」(月1回、五橋公園他)、「ゆっくりすごす会」(毎週木曜日、みやぎNPOプラザ)、「セミナー食事会」(月1回)などの活動を行っています。

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「ゆっくりすごす会」での一コマ

◇東日本大震災を傷あと
 ホームレスの皆さんが抱えている問題は様々です。病気、障がい、高齢、依存症、債務などから、虐待やいじめ、信じていた人に騙されたといった癒されぬ心の傷など、私たちの現代社会が抱えている課題そのものを背負って生活をしていられます。
 そして、ご存知のように、2011年3月11日、あの東日本大震災が起こりました。その震災後、仙台には全国の復興関連の職を求めて多くの人がやってきましたが、その中には十分な仕事や賃金を得ることができず、そのまま仙台に残り路上生活を余儀なくされる人が続出しました。また、避難所や仮設住宅などの生活に馴染めず、また心身共に疲れ果てた末にホームレスになられた方も多々いらっしゃいます。DSCF9039
 そのような中で、私たちはより多様化する人々が抱える問題に対応していくことを目的に、相談対応窓口として「HELP!みやぎ」を開設しました。みやぎNPOプラザの一階スペースをお借りして、ホームレスの方からの相談だけでなく、ネットカフェで寝泊まりしている方、車上生活者、家賃滞納者といったさまざまな問題を抱える人たちからのSOSの声を聞かせて頂き、できる限りの支援を続けています。
(現在、電話対応とさせて頂いております)

◇みんな尊い“いのち”を持ったかけがえのない人
 私はホームレスの方々を、決して「個人の問題」、「自己責任」とは思っていません。私たちも協力をしている厚生労働省の調査による仙台市内の路上生活者は、102名といわれています。その102名のホームレスの方には、102名それぞれに路上生活に至る「理由」、「事情」、「経緯」があり、102名それぞれの“思い”、“心情”があり、“辛さ”、“寂しさ”といった感情があります。そして、その102名の方は今日も、真剣に、一所懸命に生きている。これは間違いのない事実なのです。
 ですから、私はホームレスの方とふれあう時、尊いいのちを持った、この世にたった一人の大切な人という心でふれあいを持たせて頂いております。人間とは強くもあり、弱くもある存在です。何らかの出来事、キッカケで、私自身もいつホームレスになるかわかりません。ですから、‟私は援助している人”といった心をたとえ僅かでも持っていては、絶対に活動をしてはならないと思っています。

 ここで、私たちが作成している報告書である『夜まわり報告』第29回(2016年8月1日刊)に寄稿された、ある男性ホームレスの方の手記をご紹介させて頂きます。

 とにかく仙台の路上は寒かった。死にそうなくらい寒かった。もう今年の冬は生きて越せないと思った。仙台夜まわりグループの皆さんの管理する部屋に入らせてもらって、久しぶりに布団の上で寝れることの有り難さを感じている。大学まで卒業して何をやっているんだと言われるかもしれないけれど、自分は自分なりに精一杯やってきたんです。タバコも酒も賭け事もやらなかった。でもどこかで歯車が行き違ってしまったんでしょうね。自業自得と言う人もいるけれど、路上の仲間たちは自業自得ではない人ばかりです。自分はホームレスなどにならないって誰もが別世界のように考えているでしょうけれど、僕だって自分がこうなるなんて思ってもいなかった。誰もがそうなる可能性がある社会だってことをみんな知ってほしいです。今度こそゼロからのやり直しだと思って、頭を坊主に剃りました。精一杯自律に向けてがんばりたい。

「ホームレス」とは単に家がないという意味での「ハウスレス」とは違います。家族や友人、知人、あるいは社会との関係を喪失してしまった状態を意味します。ですから、ホームレスの方にただ単に衣・食・住を与えればいいということではありません。家族や友人、知人といった「私的なセーフティーネット」と、地域社会における「公的なセーフティーネット」に、すべての人が守られ、生きていける世界を、私は創り出していきたいと思っています。
 と同時に、誰しも人生には失敗がつきものです。しかし、その失敗と思える事柄、出来事こそが、大きな成功のための人生体験として、みんなで生かし合っていける、そんな仲間づくり、ネットワークを構築していきたいと念願しています。
 そういった意味では、キリスト教や仏教といった垣根を越えて、心と心のつながりを大切にする宗教(者)の力、役割も、今後、益々大きくなっていくと思います。
 これからも、同じ志を持ってボランティアの道を歩む主人と共々に、私たち「夜まわりグループ」のモットーであります、

できるときに、できることを、できる人が

という心を胸に、“まず私から”できる限りの実践をして参りたいと思います。

※ホームレスの方々へのボランティアを始めたばかりの頃、その当時の思いを私なりにエッセイ風にまとめさせて頂きました。最後にご紹介させて頂いて、私の投稿の結びといたします。

シャワーにて

あーさっぱりした!厚着してたから服脱いで、せいせいと洗ったら身体がほぐれたよ

シャワーを浴びて頭をゴシゴシ拭きながらSさんが言うと、
すかさず、お疲れ様でしたーの明るい声がスタッフからかかり、和やかな雰囲気にボランティア初日で、今風に言う所のテンパってる状態だった私の心はSさん同様すっかりほぐれてゆきました

DSCF9040シャワーや洗濯などを待っている間、ホッと一息ついてもらうために用意されたインスタントコーヒーにお好みで入れるお砂糖が大匙スプーン山盛りで二杯三杯と紙コップに投入されてゆきます
その量の多さに路上での生活が、いかに厳しいものかリアルに迫ってきて、私の指先は初夏だったのに冷たくなって、こぶしを握りしめました
冷たくなったり、ほぐれたりと、そんなボランティア初日でした

それから早十ヶ月

Tさんブラシ ブルー系 Dさんw86デニム Mさんw72茶 Sさん 先週胃痛、etc…
一見なんの事かと思うようなメモがたくさんたまりました

全国から寄せられた真心の支援物資を、公平にかつ必要な方に必要なものをお渡しするためにメモが活躍します

そしてもう一つみなさんの好みや体調を覚えることで、
日々緊急事態の中で生きているみなさんに、ひと時ではありますが日常を取り戻していただきたい

たとえば家族があったなら、または仕事があったなら、お昼休みの仲間との会話 当たり前の日常の一コマその再現をめざしています
これはスタッフ皆の思いだと痛感しています

Sさん胃の調子はどう?
僕って神経質だから胃にくるんだよね

Cさんグレーが似合うから、このセーターいかが?
着てみたCさん、これまたぴったり!
スタッフから拍手 まわりのみなさんも、つられて拍手

えっ?ナウいって何年ぶりかで聞いたよ(笑)

バイビーってそれいつの時代のギャグよ

軽口をたたきながら、
それぞれのスタイルで帰って行く後ろ姿に
時は三月、厳しい冬を乗り越えてよくぞ生き抜いて下さった
頭が下がる思いです

当事者の皆さんもそして私たちも、自分の人生を自分らしく歩んでいける道を一緒に探してゆきたいと思っています

溝口美貴 筆

決定写真

ご夫婦で「カレー炊き出し」の準備

 

特定非営利活動(NPO)法人
仙台夜まわりグループ
○住所:〒983-0044 宮城県仙台市宮城野区宮千代2-10-12

○Tel/Fax:022-783-3123
○緊急・ヘルプ:050-5539-6789
○URL:http://www.yomawari.net/
○E-mail:yomawari@medialogo.com

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