【特別寄稿2】佐藤正友(宮城県仙南中央森林組合長) 世に生を得るは事を為すにあり
- 2016/8/25
- 明日を創る
「宇宙航空研究開発機構」(JAXA)による「角田宇宙センター」がある街として、全国的にも有名な宮城県角田市。その角田市で市議会議員を四期16年、 市議会議長などの要職を務められた佐藤正友さん(68歳)は、議員を勇退後、豊かに広がる里山の山林を活かしての自然保護、青少年の育成、そして社会福祉 にと、日夜励んでいらっしゃいます。
現在、宮城県仙南中央森林組合長でもある佐藤正友さんに、“地域への思いとその活動”について語って頂きました。
世に生を得るは事を為すにあり
私の3つの思い
議員時代を通して、今も変わらぬ思いは3つあります。
一つ目は、この角田市を本当に住みよいに地域社会へと創造していくこと。二つ目はこの豊かに広がる里山の自然を守り、しっかりと後世に伝えていくこと。そして、三つ目は青少年の人材育成です。この3つは、私の一生を通じて行っていきたい願いでもあり、夢でもあります。
市会議員としての現役時代には、友好都市であった東京都目黒区とタイアップして、東京の子どもたちにぜひ、豊かな日本の自然を肌身で感じてもらおうと思い、角田市に目黒区の子どもたちを招いての「ホームスティ」を行なってきました。
私も今までたくさんの東京の子どもたちを受け入れ、山林作業や農作業体験をしてもらいました。そのための施設として、私の家の敷地内に「里山のふるさと 協創塾」(写真①➁参照)も作らせて頂きました。
現在、「里山のふるさと 協創塾」はホームスティの受け入れだけではなく、地域の皆さんの寄り合いの場や学びの場として開放しております。
美しい森づくりのために
佐藤家にはお陰さまで、先祖代々受け継がれてきた山林があります。5年前の東日本大震災の時は、(わずかでも被災者の皆さまのために)という思いで、山林から暖房用の薪木を役立たせて頂きました。
私は、現在、宮城県仙南中央森林組合の代表理事組合長のお役を頂戴しておりますが、森林はまさに「資源の場」であり、「教育の場」であり、また「癒しの場」であり、そして「作業の場」であります。
この美しい角田市、そして仙南地域の森林をまず守っていく義務が私にはあると思っています。ですから、当地では森林から伐採した木材を使っての製品加工など、地場林業がだんだんと活発になってきています。
しかし、森林の伐採を進めれば、進めるほど、その一方で植樹を行って再造林をしていかなくてはなりません。
「J-Forest(全国森林組合連合会)」の 森林組合綱領に、次の一文があります。
私たち森林組合は、地域の森林管理の主体として、地域の森林を協同の力で育て守り続け、森林環境保全と林業発展を通じて地球温暖化防止へ貢献するとともに、水源の保全、国土の安全、健全な森林環境保全と良質な木材を国民へ提供しながら、健康で安心、豊かな住生活を支えていくことを使命とします。
そのような意味では、私も森林組合の組合長として、森林の手入れや管理ができない所有者に変わって、〈植樹→育林→伐採→製品加工→植樹〉といった、森林保全のサイクルをしっかりと推進して参りたいと思っています。
と同時に、私たちに“癒し”や“安らぎ”を与えてくれる、例えば川のせせらぎの音が聞こえ、鳥がさえずり、虫が鳴き、また夏にはホタルが行き交うような、そんな日本の原風景ともいえる森づくりにも取り組んでいくつもりです。
手作りジャムのお店
角田市に「社会福祉法人臥牛三敬会 虹の園」という施設があります。社会就労センターとして、身体的、精神的あるいは知的な障害を持たれている方に働く場を提供している施設です。
議員時代から、私は市民のお一人お一人が自分の持つ特技や能力を活かして、みんなで明るく、楽しく、そして仲良く暮らせる社会づくりを目指してきました。それは、お身体が不自由であっても、あるいはお身体のどこかに障害を持たれていてもまったく変わりません。
そこで、そういった皆さんにも“ぜひお役に立たせてもらいたい”と思い、私の土地を提供し、集落所有の木材を活用し、平成22年7月1日から「虹の園」が経営する手作りジャム工房「工房 美山の里」の立ち上げのお手伝いをさせて頂きました。コンセプトは、角田市で採れる旬の果実を活かしての、年中食べられる「手作りジャム」等の製造です。
ジャムの製造の様子は、ガラス越しに見学することができるようにし、また店内ではシフォンケーキやコーヒーを楽しんで頂き、里山の自然に抱かれながらゆっくりできるスペースも設けさせてもらいました。
またジュースやサラダドレッシングなど、やはり市内でできた果実や作物を使って「虹の園」の皆さんによる手作りの商品もたくさんおいてあります。
お陰さまで、地域の皆さんも自分の畑で採れたブルーベリーなど、四季折々の果実をご提供させて頂いております。
今度、ぜひ多くの皆さまにお越し頂ければと思います。
☆ホームページURL:http://www.nijinosono.or.jp/msg/miyama.htm
地方創生のために
私の地元・角田市には、5つの自慢の“め”があります。それは、「米(こめ)」、「豆(まめ)」、「梅(うめ)」、「夢(ゆめ)」、「姫(ひめ)」、それぞれの“め”です。
「米」、「豆」、「梅」の3つの“め”は、角田市の地産地消型の豊かな食文化の象徴で、古くから盛んに生産されてきました。
そして、「夢」の“め”は、JAXA角田宇宙センターや台山公園のスペースタワー・コスモハウスなどをシンボルとする宇宙や科学への夢で、明るい未来の象徴です。
そして、最後の「姫」の“め”は、伊達政宗公の次女の牟宇姫(むうひめ、1608年‐1683年)の“め”です。牟宇姫は伊達氏一門・角田石川氏第3代当主 石川宗敬公に嫁いできました。毎年早春に開催される「かくだ牟宇姫ひなまつり」では、嫁入り道具として持参したと伝わる雛人形の展示など、牟宇姫にちなんだイベントが開催されます。
角田市も少子、高齢化が進み、経済的・社会的な共同生活の維持が難しく、社会単位としての存続が危ぶまれている集落、いわゆる限界集落の兆しが見えつつあります。
しかし、私はけっして悲観していません。この5つの“め”を、私たち角田の誇りとして、故郷自慢として、宮城県はもとより日本全国へと発信していきたいと思っております。なぜなら、本気で取り組めば、必ず明るい未来が訪れると信じているからです。
幕末の志士 坂本龍馬は、次の言葉を遺しました。
世に生を得るは事を為すにあり
(人生の本当の目的は出世をしたり、事業や学業で成功して、財産や地位・名声を手に入れることではない。事を為すとは、夢や目標を実現することである。人生で何かを成し遂げること、人生に意味を持たせることが大切だ)
豊かな森林の保全とその活用と社会福祉に貢献することで得られるであろう、みんなが明るく、楽しく、仲良く暮らせる社会づくりに向かって、これからも日々、角田の自然に抱かれ、地域の皆さまと共に歩んで参りたいと思います。