「佼成」の会長法話は、今月から新しいテーマとなりました。第1回目は、「時代のキーワードは「利他」-布施①」です。今後どんなテーマが展開していくのか楽しみです。
”人を思いやり、自分にできることで安心や喜びを与える布施行が、仏道におけるもっとも大切な教え”(11頁9行)
一般世間の常識では、「ギブ・アンド・テイク」(何かを与えると、何かが得られる)です。しかし、仏教では「ギブ・アンド・ギブ」(与えて、そして与える)で、与えっぱなしです。受けとった人が喜ぶのを見て自分も喜ぶ。与えると喜ぶからまた与える-その繰り返しです。
「え、でもそれじゃ、どんどん減っていくだけじゃないか?」「損するだけじゃないか?」と感じる人もいるでしょう。
しかし、そこには目には見えない深い意味があるのです。与えることで、自分の心が豊かになっていくのです。物やお金に対する執着(とらわれ)が減っていくのです。その分、悩み苦しみから解放されるというのが、仏教の見方です。
物やお金を得ることで幸福を感じる人は、一時的なもので、決してほんとうの幸福を得ることはできません。その欲望は、限りなくエスカレートするものだからです。一方、執着(とらわれ)が減り、”足るを知る”ことができた人は、物やお金には関係なく、ほんとうの幸福を感じることができるようになります。
しかも、私も体験上、布施は決して与えっぱなしとは言えないように思います。布施をしたもの以上のものが不思議とかえってくるのです。“情けは人の為ならず”(人に親切にしておけば、それがめぐりめぐって必ずよい報いがある)ということわざがありますが、布施も同様だと感じます。真心の布施は、必ず大きな報いとなって自分にかえってくるようにこの世界はできているようです。
また、”ボランティア活動をはじめ、地域のお店や企業を助ける応援消費や、見返りを求めないクラウドファンディングなど、人のために自分の持っているものを使うことに喜びや達成感や生きがいを覚える人がふえているのは、それだけ人の心が広く、豊かになってきたということで、ほんとうにすばらしいと思います”(13頁4行)
こうした状況を見聞きすると、人間が徐々に進化向上しているように感じ、本当にうれしくなります。東日本大震災直後、誰もが苦しい中にもかかわらず、略奪や自己中心の行動が見られず、みんなで助け合った状況も利他の心が豊かに育っている証だと思います。
仏教の布施は、財施・法施・身施と教えられます。財施とは、お金や物をほどこす。法施とは、正しい教えを伝える。身施とは、自分の体を使って奉仕することです。
新しい年のスタートのご法話が布施に関するものでした。そこに、何か大切な意味があるように感じます。今年一年、布施を意識してしっかり精進していきましょう!
合 掌
2022年1月1日
立正佼成会仙台教会
教会長 近藤雅則