《第2回》教育現場で学んだ「常不軽菩薩」の心と実践の大切さ 嶽内真弘(大嶽山興福寺 住職)

 《第2回》教育現場で学んだ「常不軽菩薩」の心と実践の大切さ

奥州鎮護・奥州十番札所 大嶽山興福寺 住職
嶽内真弘

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○中学校での取り組み
 着任した学校は市の中心校ではありましたが、ご多分にもれずタバコの吸い殻が落ちていたり、校舎への落書きが目立つ状況でした。
 そういう中で、教職員と生徒会が三つの目標を掲げ、その実現に努力しておりました。それは次の三点でした。
(1)時間を守りリズムのある学校
(2)ゴミのない整然とした学校
(3)明るいあいさつの交わされる学校

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観音堂壁画「二十四孝物語」より

 私はこの中で“あいさつ”を徹底していくことを取り上げることにしました。それは教員生活の最後の学校として常不軽菩薩の但行礼拝をあいさつを通して行じることにしたのでした。
 中学校の部活動では元気のよいあいさつが求められており、確かに試合の時には部員仲間で交わされております。しかしその場をはなれ、日常の学校生活ではなかなか行われないのが現状でした。
 生徒達にはあいさつは漢字で書くと「挨拶」であり、偏でいつと手偏であり口偏ではないことに気づかせました。大きい声であいさつをするだけでなく「挨」も「拶」も共に「迫る」とか「近づく」という意味で相手に迫って行くことで、あいさつは相手の良さを認めることなのだと伝えたのです。
 したがって大きい声を出すだけでなく、相手に親しみを持つことであり、さらに人間は誰でも人としてかけがえのない良さを有している、その良さを認め、それに近づいていくことがあいさつなのだと話したのです。
 したがって試合の前の気合いを入れるだけでのものではなく、同じ学校の生徒同士共にそれぞれの人達に尊敬を有する人としてあいさつを交わしてほしいことを強調したのでした。
 また教師達に対しては、生徒の良さを見つけそれを伸ばしてほしい。生徒にはそれぞれの良さを有してしることを信じてほしい。その良さは必ずしも自分に都合のいい良さだけではないことも知ってほしいと伝えました。
 いま学校教育では個性の尊重が求められ、それぞれの個性を伸ばすことが強調されている。これに対して異論はないのですが、とかく自分に都合のいい個性だけに目が向けられ、自分の求めるものとは異なる個性はつぶされる傾向にあります。
 したがって個性を認め伸ばすには、自分のはからいを捨てて見なければならない。そういう点で常不軽菩薩の「すべての人は仏になれる能力がある」という強い確信を有することが必要であります。

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山門ご安置の仁王像

○常不軽菩薩品から学んだこと
 その第一は仏性です。法華経全体が仏性を顕現するための経と言われておりますが、この品では端的に示されています。ただ仏性といってもなかなか理解ができないようです。そこで私は自分なりに一人一人にとってかけがえのないものとして、「いのち」を仏性と捉えたのです。
 第二には布教と言いましょうか、法華経を広める段階を示していることです。
 その一つは仏性を確信していることです。だから石を投げられようともあきらめずに尊重している姿であります。
 二つ目はそれを単純な行動で示していることです。それは礼拝です。

「しかもこの比丘は専ら経典を読誦するにあらずして、但、礼拝を行ずるのみなり」
に深い確信がこのような単純な行動を行わしめているようです。
 三つ目には、だからと言って自分の正義を主張し相手をやり込めて無理に納得させようとはしていない、「避け走り、遠くに依りて、なお、声高く唱えて言わく『われ敢えて汝等を軽しめず、汝等は皆当に仏と作るべし』」は、理解できない人にあわれみを持ち遠くから祈っている姿に、すぐ効果を求める現代とはちがう深い人間理解が伺われるのです。無理をせず、しかしあきらめることのない姿が身近な存在として感じられるのです。

○終わりに
 天台宗では法華経と言うと「方便品」「安楽行品」「寿量品」そして「普門品」が重視されておりますが、私としては「常不軽菩薩品」は非常に身近に感じられ、その行動を少しでも日常生活に生かそうとしたのでした。
 勤務したのが公立学校でしたので、「仏性」とか「礼拝」という用語をそのまま使うことは避け、「あいさつ」と「かけがえのないいのちとか、その人の良さ」という表現にしました。
 しかし、たとえ仏教や法華経の用語は使わなくても、こちらがしっかりとその精神を持って生徒たちとふれあいを持たせて頂いたことは、今改めて振り返ってみても、私にとって大きな宝となっております。

合 掌

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興福寺 観音堂

薬師堂 決定

薬師堂

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「書院」奥座敷の格子窓

☆☆ 興福寺さまからのお知らせ ☆☆

大嶽山十一面観世音菩薩

三十三年一会(いちえ)の秘仏開帳

 大嶽山興福寺では、平成二十九年に三十三年一会の秘仏開帳が執り行われます。当寺の秘仏は国宝でもなければ重要文化財でもありません。しかし、日頃地域の皆様方の身近にある文化遺産として地域の人達に慕われてきました。
 開帳は、普段、本尊十一面観世音菩薩は扉の閉まった仏堂の中に秘仏として安置されており、三十三年に一度その扉を開けて参詣に訪れた皆様が直接本尊を拝める機会になります。前回は昭和六十年でした。その時は約二千三百名の方々に奉賛を頂きました。
 今、大嶽山は登米市の観光スポットとして、七月の紫陽花や、市の文化財指定を受けている六角堂、観音堂に施された壁画、中国の孝行譚「二十四孝」などがインターネットで取り上げられております。
 今度の開帳にあたっては、法要以外にもいろいろな催し物や展示物、出店など参詣頂く皆様に楽しく過ごして頂けるよう計画を練っているところであります。
つきましては、三十三年一会にあたった御縁に感謝し、地域文化遺産としての開帳行事に皆様の御参拝を心からお待ち致しております。

一、期 日:平成二十九年七月十五日(土)、十六日(日)、十七日(月・海の日)

二、行 事:法 要 十五日 午前十時 開扉法要、十七日 午後六時 結願法要

 ※この三日間は、午前十時から午後六時まで二時間毎に法要を執り行います。

○催し物: 小学生伝統芸能発表、大嶽山観音太鼓 他

宮城県登米市南方町本郷大嶽18
大嶽山興福寺
秘仏のお前立ち観音

秘仏のお前立「十一面観音菩薩像」

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