👶最終回「 にんしんSOS仙台」 ~キミノトナリにいるよ~ 東田美香さん(特定非営利活動法人キミノトナリ代表理事)
- 2022/2/1
- 明日を創る
さまざまな事情によって、親や友人、あるいは行政などには相談できない妊婦さん方の「にんしんSOS窓口」となり、適切な支援へと結びつける役割を、民間団体として担っていくことを目的として設立された「特定非営利活動法人キミノトナリ」。
その理念や活動について、同法人代表理事の東田美香さんのお話を掲載していきます。今回はその3回目、最終回です。インタビューアーは、引き続き安藤高子(仙台教会婦人部長)です。
安藤
東田さん、今回でインタビューもいよいよ最終回になります。どうぞよろしくお願い致します。前回は、『キミノトナリ』のスタッフ皆さまが、相談者さんに対し大切にされていることなど聞かせていただきました。
東田さんの熱意で集まったさまざまな資格をお持ちのスタッフさんが、真摯に相談に応じられていることに感動しました。こちらでは、相談者さんの思いを一番大切にされ、自己決定を尊重されているとのことですが、話し合われた結果、頼る人がいない相談者さんが赤ちゃんを産みたいですと気持ちが固まった場合、その後のケアはどのようにされているのですか?
東田
まだ設立して間もないので継続支援になっている方は数人程度ですが、公的な施設に入った方もいますし、民間のシェアハウスをご紹介した方もいらっしゃいます。妊婦さんのご事情を理解してくださるシェアハウスや公的な施設に相談者さんをお繋ぎできることは、とても安心です。相談者さんによっては、月に1度くらいお会いして話しをしたり、赤ちゃんの『お宮参り』や『お食い初め』を一緒にお祝いしたり、赤ちゃんの物の買い物に同行したりしています。困難に直面したときには相談して欲しいと願っています。
安藤
そこまでされているのですか?すごいですね。大きなお母さんのようですね!
東田
もともとのご家族に恵まれていない方がほとんどなので、お母さんというとおこがましいのですが、家族の代わりのような存在になれたらと思っています。スタッフの人数も限られているので、全然追いつかないのですが。
安藤
目の前の方に真剣に向き合われているあたたかさが伝わります。誰かが私のことを気にかけてくれている。それはとても心強く、嬉しいことですね。支援する方々の輪も広がりますよう願っています。ところで、中高生の中でも、予期せぬ妊娠をした、または妊娠したかもしれないという相談が多いという観点から、性教育にも携わってらっしゃると伺いましたがいかがですか?
東田
はい。県内の高校や、小学生の居場所事業、中高生の学習支援を行っているNPOなどで、性教育の出前授業もさせていただいています。現在の日本の学校教育では、性教育は保健体育をはじめとする関係教科で指導されていますが、内容も量も全く足りていません。国語や数学といった学習はもちろん大切ですが、性教育も人権教育として重要なことなので、信念を持って取り組んでいます。
安藤
″性″に関しては、なんとなくふれにくいことですね。伝える時期や、どう伝えるか。ふれにくいことだからこそ、情報社会の中で誤った知識が横行しないように、きちんと伝えていくことが大切なことなのですね。
東田
タブー視されがちな″性″ですが、思いがけない妊娠や性加害・被害、性感染症などを防ぐために、正しい知識を幼児期から伝えることが重要だと思います。大人がきちんと向き合うことで、少しでも子どもたちが安心安全な社会で生きて行けるようにしたいと思っています。
安藤
そうですね。今後、一部の学校だけではなく、共通して学べるようになるといいですね。『キミノトナリ』を設立され、まだ間もないとは思いますが、スタッフや相談者、たくさんの方とご縁を繋がれて、設立前と後では何かお気持ちに変化などございますか?
東田
気持ちの変化ですか…。私、よくものごとを考えないタイプなんです。設立前に思い描いていたようになりましたか?と聞かれることもあるんですが、そもそも「こうなるだろう」というイメージは思い描いていなかったので。
安藤
こういうところが変わったなぁとか。
東田
気持ちは変わっていないんじゃないかと思います。
安藤
なんかすごいですね!きっと、思うようなことばかりではなく、ご苦労もたくさんある中だと思うのですが、一貫して、『私はこれをやりたい』そういう東田さんの人を思う『意志』みたいなものを感じました。ぶれない強さやしなやかさは、いままでのご経験の積み重ねで作られてきたものが大きいのでしょうか?
東田
そうかもしれません。私は職を転々としてきたし、失敗ばかりで、自分ではろくな人間じゃないなっていうところがあるんですけど、いろんな経験をしたことが全部、今に結びついているのかなぁと思います。無駄な経験っていうのがなかったんだな、と。芸能界で働いていたことも、今、それがあるのでマスコミ対応やイベント運営にも役立っていますし、あとはやはり、一時期、法律の勉強をしたこともすごく活きています。
安藤
ご自分の経験を糧とし、たくさんの方に寄り添う力にされていることに勇気をたくさんいただきます。教えていただきありがとうございます。
最後になりますが、これからの社会の中で、理想や目指されていることなどお聞かせいただけますか?
東田
大きいところで言うと、この世に生きる人全てが、幸せだと思える社会になればいいなと思います。幸せの価値観は人それぞれ違いますし、感じ方も違いますよね。金銭的に余裕があることや、人間関係に恵まれることが幸せだと感じる人。一人でいることが好きで、幸せを感じる人もいるし、一人でいることに孤独を感じる人もいる。人それぞれ、幸せを感じるポイントが異なりますよね。それでも、まだまだ世間では、異性と結婚して、子どもをもうけ、そして死ぬときには子や孫に見守られて、あぁ、幸せな人生でしたって死ぬのがベストみたいな考え方があるじゃないですか?
もちろん、それが幸せな人もいると思います。だからといって、それを否定するわけではありませんが、本当に一人でいるのが幸せだという人もいると思うんです。そういう人に対して、例えば「今はいいけれど、年とってから寂しいよ、結婚した方がいいよ、子どもを生んだ方がいいよ」と言う方は多いですよね。でも、お子さんがいるからといって、必ずしも幸せな老後を過ごせるわけではない。一つの固定した『幸せはこうである』というような価値観じゃなくてもいいんだよっていうことを、お互いに認め合えるような社会になったらいいなと思います。
それは夫婦別姓などもそうですけれど、同姓にしたい人はすればいいし、別姓にしたい人は別姓でいい。結婚だって異性同士で結婚したい人は異性同士ですればいいし、同性と結婚したい人は同性と結婚すればいい。結婚したくない人は結婚しなくていい。そういう制度変更をしていく方が、みんなが幸せに生きられますよね。
安藤
最近では、『多様性』を尊重しようという声をよく聞きますね。
東田
そうですね。互いの違いを認め合えるような世の中になるといいですよね。それぞれの『幸せ』で生きていって、例えば高齢になったときに困るよっていうのであれば、高齢者のコミュニティをつくるとか、お互いに助け合って生きていけるようになったらいいなぁと。私は高齢者と子どもが、一緒になって集えるような、そういう地域拠点みたいなものが各地にあるといいと思うんです。
例えば、子ども食堂の先駆けとなった東京の団体では、一人暮らしのご高齢な方が大きなお宅に住んでいて、そちらを貸していただきたいとかけあって運営しているそうです。高齢者は孤独が解消されますし、子どもたちにとっても、見守ってくれる大人とご飯を食べられることはすてきなことですよね。すごく理想的だなぁと思っているんです。こんな風に、さまざまな形で孤独って解消できると思います。
特別養子縁組もそうですけど、血のつながりが全てじゃないよねっていうところを目指していきたいと思っています。
安藤
地域のコミュニティの中で、血のつながりとか関係なく、高齢な方もお孫さんのような子どもたちに囲まれて過ごされることは、きっと元気をいただくでしょうね。地域も元気になると思います。いろんな境界線を越えて、お互いが理解し合い、助け合える社会になったら素敵ですね。
今回はたくさんお話しを聞かせていただきありがとうございました。
(了)
【特定非営利法人キミノトナリ】
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【キミノトナリの活動】
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〇包括的性教育の促進
〇特別養子縁組制度の普及・啓発
〇講演・性教育出前授業
〇レギュラーラジオ番組『キミトナラジオ』(エフエムたいはく・毎週水曜22時~22時30分)
【東田美香さんプロフィール】
宮城県第一女子高等学校卒
上智大学文学部教育学科卒
東北大学法科大学院修了(法務博士/専門職)
現在、以下の要職にある。
特定非営利活動法人キミノトナリ 代表理事
NPO法人ほっぷすてっぷ 理事
子ども虐待防止ネットワーク・みやぎ(キャブネット・みやぎ)相談員・広報部長