📝 “難が有る=有り難い” ~ 上甲晃先生の講演を拝聴して ~ N.S(仙台教会泉西支部)
- 2021/10/22
- 青年が創る
〇困難はチャンスである
私は仙台教会泉西支部に所属するN.Sと申します。先日、10月10日(日)に仏教経営塾市民講演会に参加し、上甲晃先生のお話を聞く機会がありましたので、感想を書かせていただきます。
上甲先生は1965年に松下電器産業に入社し、広報・販売などを担当されていました。1981年には「松下政経塾」に入職され、以後将来のリーダーとなる政治家や経営者を育てるために、人材育成に尽力されてきました。
現在は「松下政経塾」を退職し、80歳という年齢ですが「志ネットワーク」という活動を通して今なお若者の育成に取り組んでおられます。
講演の内容を簡潔に言えば、《「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助さんがどのような心構えによって成功を収めたのか》というお話でした。
講演の題名が「仏教経営塾」ということもあり、経営者へ向けた話が前提ではありましたが、経営者でなくても普段の生活で気を付けなければいけない要素が多分に含まれていたので、自分のことを省みながら聞くことができました。
上甲先生が、今回の講演で最も伝えたかった要点は次の一点ではないでしょうか。
「困難はチャンスである」
“難が有る=有り難い”ことだと思って考えることが大事だということを強く話されていました。順風満帆でうまくいっているときは、自分に自信がつくけれども、傲慢になりがちで振り返ったり、反省することが難しくなる。困難があるからこそ人間は成長していくことができる、とおっしゃられていました。この「困難はチャンスである」ということを解説するために、松下幸之助さんが経営者として成功された3つの理由を引き合いに出されていました。
〇松下幸之助さんが成功した3つの事柄
松下幸之助さんが経営者として成功したのは以下の3つだそうです。
1.体が弱かったおかげ
2.家が貧乏だったおかげ
3.学歴がなかったおかげ
1.体が弱かったおかげ
松下幸之助さんは幼少より体が弱く、仕事をするにも人の半分程度しか働くことができず、あとの半分は床に臥せていたそうです。病弱だったので人に頼らざるを得ないことが多く、会社を立ち上げてからも社員や仲間を全面的に信頼して任せていました。
しかし、そのことが逆に社員の成長を促し、社員も期待に応えようと必死に働いたので他社に比べて社員がよく育ったそうです。また、自分が体が弱いおかげで他の体の弱い人の気持ちがわかることも、社員の信頼を得るうえでよい方に働いたそうです。
2.家が貧乏だったおかげ
松下幸之助さんは4歳のときに父親が仕事で失敗したことにより、夜逃げする形で一気に貧しくなりました。9歳の時には大阪へ丁稚奉公に出て自転車屋で働きました。その時もらった5銭という当時の飴玉一個分くらいの給料が大金に見えてすごく嬉しかったそうで、この5銭のありがたみを感じられたのも家が貧しかったおかげということです。
3.学歴がなかったおかげ
先にも書いたように松下幸之助さんは9歳で働きに出ているので、小学校すらまともに卒業していません。しかし、だからこそ自分がほかの人より知識がないということがわかっていたので、誰の話も最後まで真剣に聞くことができたそうです。これが学歴がなかったお陰です。
この3番目の理由の中で上甲さんが、《人の話を真剣に聞くことがどれほど重要なことか》を話されていました。私は特にこの部分が印象に残り自分の生活と照らし合わすことができたので、自分の体験も交えながら少し具体的に書かせていただきます。
〇相手の話を聞かせて頂く~自らの体験を通して
これまで、政治家を目指す数多くの塾生を指導してきた上甲さんは、とても話が上手で聞きやすかったのですが、その上甲さんが「上手く話す」というのはただの技術であり、抑揚のつけ方や、話の構成などコツをつかめば誰だっていつかはうまく話せるようになる、と言われていました。ただし、「人の話を聞く」というのはテクニックではなく、その人の心が現れるものだと言われていたのが胸に響きました。
この話を聞いた時、自分はドキッとして誰にもばれないようにこっそりと椅子に座る姿勢を直しました・・・。実を言うと、ホールの椅子の座り心地があまりにも良かったこともあり、私は上甲先生の話をかなり雑な姿勢で聞いていました。その時、《人の心は人の話を聞くときに出る》という話をされたので、まるで自分に言われているような気持ちになって恥ずかしくなりました。
そこから少し最近の自分の生活を振り返ってみると、確かに会社でも嫌なことがあると、相手の目を見ないで、ほとんど人の話を真剣に聞けていなかったのではないかと反省しました。
学生の頃、介護施設で夜勤のアルバイトをしていたことがあり、認知症になられた入居者の方と接する機会が多くありました。そのとき不思議に感じたのが、認知症の方は相手をする職員によって態度が激変することがあるということでした。その時、私が思ったのは、(認知症の方とそのお世話をする人は人格が鏡写しになってるんじゃないかな)、ということでした。
認知症の人が暴れたり噛みついたりして、手に負えなくなるときは、多くの場合対応しているその職員に問題があったように感じました。
今回、上甲先生のお話を聞いて、(あ、あれは話の聞き方が違ったんだな)と府に落ちました。
認知症のおじいちゃん、おばあちゃんが伝えたいことをまともに聞かず、雑に対処している人ほどかえって余計な問題が起きていました。逆に丁寧に物腰柔らかく接し、真剣に話を聞こうとしていた職員のときは、認知症の人も別人かと思うくらい穏やかで優しそうな人に変わっていました。
学生の頃はそんな風に感じて気を付けないといけないなと思っていましたが、最近の自分は心に余裕がなく、仕事でイライラしたりするとまともに職場の人の話を聞くことができず、余計にギスギスさせてしまい、なんでこの人が不機嫌なのかわからない状態に陥っていました。
このたびの上甲先生のお話を聞いて改めて「人の話を真剣に聞くこと」の重要性を学びました。そして相手がどう思っているのか、何をしたいのかを知ろうとする努力が聞く姿勢に現れるんじゃないかと感じました。
〇「まとめ」にかえて
上甲先生の講演の要点は、繰り返しになりますが、
「困難はチャンスである」
ということではないでしょうか。
普通の人だったら「~のせいで」とか、「~だから仕方ない」と後ろ向きに思ってしまいそうなことも「~のおかげ」と考えられるようになることで困難をチャンスに変え、一見不利な状況も実は自分にとって有り難いことだと思えるようになるということを学びました。
そして、この講演を聞き、私はこれから嫌だなと思う状況も、見方を変え、誰の話でも真剣に聞くことができるよう、一つ一つ小さなことから努力していきたいと思いました。
合掌
N.S(仙台教会泉西支部)