【第1回】この世界の仕組みを理解すれば人生がより楽しくなる!! 平塚真弘(東北大学大学院 准教授)
- 2016/11/1
- 自分を創る
この世界の仕組みを理解すれば人生がより楽しくなる!!
― 宗教観を素粒子レベルで紐解いてみる ―(第1回)
私の専門は薬学です。特に、薬の効果や副作用発現の個人差が、遺伝子配列の違いによって生じる仕組み(メカニズム)を解明し、医療の現場に応用するファーマコゲノミクスという研究分野です。これまで、約30年間、サイエンス(科学)を勉強してきましたが、最近、仏教的な様々な教えが、どのような科学的メカニズムで成立しているか興味がわきました。そして、様々な仮説を立てていく中で、原子よりも小さい物質の単位、すなわち素粒子レベルのエネルギーを軸とした相互作用が、この世を形作り、ヒトの人生を決定していくのだろうと考えています。
このコラムで言いたいことは、この世の中がどのような仕組み(メカニズム)で動いているのか理解することで、自分が生まれてきた使命に気づき、より人生が楽しくなるのではないだろうか、と言うことです。
◇私とあなたはどれだけ違うのか?
だれでも好きな人や嫌いな人はいるし、人間関係で悩んだことがない人などはいないのではないでしょうか。熱心に信仰をされている方でも、時には、誰かの悪口を言ったり、批判をしたり、自分と比べて相手を見下したりしたことはあるでしょう。確かに、上司の○○さんよりもあなたは仕事ができるかもしれないし、嫁いだ先の姑さんはあなたが理解に苦しむ小言を言うかもしれません。それでは、あなたとその人はどれだけ違うのでしょうか。
まずは、体の構成成分から考えてみましょう。私達の体は、驚くべきことに、その体重の約60%が水です。その他はタンパク質が17%、脂肪を含む脂質と呼ばれるものが14%、カリウムイオンやナトリウムイオンなどの電解質と呼ばれるものが6%、炭水化物が1.5%、残りはその他となっています。この構成比は個人や性別で若干の違いはありますが、ほぼ同じといって良いでしょう。したがって、私とあなたの体を作っている素材はほとんど一緒で、そこに優劣はなく、「彼も人なり、我も人なり」なのです。しかしながら、外見は随分違います。それは遺伝子と呼ばれる体の設計図が人によって違うからです。
ヒトは約37~60兆個の細胞からできていると言われており、その細胞1つ1つに設計図が入っています。遺伝子と呼ばれる設計図は4種類のデオキシリボ核酸(DNA)が暗号のように約30億もつながっており、その長さは2メートルにもおよびます。つまり、直径0.01ミリメートル(1ミリメートルの100分の1)の細胞の中に約2メートルのDNAが入っており、それを設計図として体の機能に必要なタンパク質を作り、様々な臓器を作り出し、ヒトができあがっています。では、この30億あるDNAの並び方は、私とあなたではどれくらい違うのでしょう。なんと、約99.9%は同じなのです。このことは、近年の科学・技術の進展により、2003年にはじめて明らかになりました。昨日まで悪口や文句を言っていたあの人は、あなたとほぼ100%同じ体の素材を持ち、DNAの並び方に関しては99.9%同じなのですね。
(第2回に続く。次回更新は12月1日です。どうぞ、お楽しみに!!)
【著者プロフィール】
宮城県女川町出身。石巻高校卒業後、東北大学大学院修了。
大学院卒業後は東北大学医学部助手、東北薬科大学講師、スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員等を経て、現在、東北大学大学院薬学研究科准教授。薬学博士。