“仕事に惚れ、仕事ができることに感謝する!” 教会長 近藤雅則(平成30年9月)
- 2018/9/1
- 心を創る
『佼成』9月号の会長法話は、「あらゆる「いのち」に奉仕する」がテーマ。
「八正道(はっしょうどう)」の中の「正命(しょうみょう)」について教えられています。「正命」とは、正しい仕事によって生計を立てるということです。庭野会長は、「正しい」とは、仕事の対象となる相手や物を尊び、敬い、感謝の念をもって、与えられた役割に一所懸命とりくむことだと強調されています。言い方を変えれば、仕事に惚れ、仕事ができることに感謝することとも言えます。ここがしっかりしていなければ、正しい生き方や幸せな生活はできないと思います。
「正命」を現実の生活にあてはめたときに、二つのポイントがあります。
まず一つ目のポイントは、正しい仕事によってということです。世の中の仕事の多くは、それ自体が社会のため、多くの人々のために役立っています。また、多くの人は、真面目に一生懸命仕事をしていると思います。
しかし、最近のニュースを見ると、日本を代表する企業が数値や品質をごまかして利益を得ている不祥事がありました。また、オレオレ詐欺などの問題もなかなか減りません。人をごまかしたり、だましたりして利益を得て生きることは、「正命」とは言えないわけです。
また、ギャンブルで生活費を稼ぐことも、「正命」とは言えません。ギャンブルで稼ごうなんて本当に愚かなことで、うまくいくはずがありません。日本には、パチンコや競馬などのギャンブル依存症の人が300万人以上もいるそうです。現在、政府があわてて進めている「カジノ法案」が成立すると、さらに多くの家庭がギャンブルで破綻してしまうのではないかと心配です。
もう一つのポイントは、仕事によって得られた収入の範囲内で生活をするということです。その範囲を超えると、借金生活に陥ることになります。
最近は、現金を持たなくても買い物ができます。誰もが簡単にカードを作り、そのカードによって買い物ができるために、いつの間にか感覚がマヒし、収入以上の買い物をしてしまう。その結果、気がついたら借金が膨れ上がっていたというケースも多いのです。恐ろしいことに、一度味わった生活のレベルを下げることは難しいのです。借金するのはダメだと分かっていても、修正できず、どんどん借金が増え続けていくのです。
佼成会員の中にもそうした方がいます。どんなに仏教を学び、修行精進しても、実際の生活を正しく行わなければ幸せにはなれないことを、この「正命」の教えから学ばなければなりません。
10の仕事をして、9の収入を得て、8の生活をする。こうしたならば、つつましくても、堅実な生活ができます。子供もしっかりとした考え方ができる人間に育ちます。ところが、10の仕事をして、11の収入を期待し、12の生活を望むために、借金生活に陥ってしまうのです。こうした家庭の子どもは、節度のない人間に育ちます。ですから、この「正命」の教えは、現代に非常に重要なことなのです。
仏教の教えは、心の修養だけではありません。具体的な実践によって、安心で堅実に生きる生活実践の教えなのです。
合 掌
平成30年9月1日
立正佼成会仙台教会
教会長 近藤雅則