🌱 シリーズ「ニュー方便時代」とはなにか?(第1回)

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 立正佼成会では2021年の教団布教方針を、次のように発表しました。

ニュー方便時代
~一人ひとりの救い救われに向かって~
笑顔と涙によりそおう

 では、この方針に打ち出された《ニュー方便時代》とはどんな時代なのでしょうか?
 このシリーズでは、「方便」、「時代」、「救い」、「よりそい」といったキーワードを通して、また現代社会の様相、人びとの心のありよう、人類が抱えるグローバルな課題などを視点として、皆さんと共に《ニュー方便時代》とは何かについて考えていきたいと思います。
 第1回は、庭野日敬開祖が晩年に遺した書物『瀉瓶無遺(しゃびょうむい)』に、ニュー方便時代を探る手掛かりを求めてみました。

【第1回】『瀉瓶無遺』に説かれる庭野開祖のこころ

 『瀉瓶無遺』は平成5年8月、庭野開祖が88歳の米寿を迎えた年に発刊した本です。その“はじめに”の中で、
「瀉瓶無遺」という、この書名こそ私の気持ちを如実に語ってくれていると思うのです。(注1)
と記され、庭野開祖ご自身が悟られた仏教の神髄をあますことなく、正しく、伝えていきたいというご決意とも思われる言葉が述べられています。
 では、この新しい布教方針「ニュー方便時代」を考えていくうえでの、そのポイントとなると思われる庭野開祖のお言葉を、ピックアップしてみましょう。

〇お釈迦さまが教えを人びとに伝えようとお思いになられたのは、なぜでしょうか。(中略)自分の悟りだけで満足するのではなく、経典の言葉どおり「皆共に仏道を成(じょう)ぜん」というのが、お釈迦さまの教えのそもそもの出発点であったのです。(『瀉瓶無遺』40頁)

 仏教の始祖であるお釈迦さまが、まず“みんなと一緒に救われましょう”とおっしゃっていることを庭野開祖は紹介し、お釈迦さまを教主とする本会の救いの在り方を明確にしてくださいました。つまり自他共に救われる》ということかと思います。

〇方便という言葉は梵語の「ウパーヤ」、すなわち「近づく」というのがもともとの意味です。方便は、あくまでも悟りの境地である彼岸に近づかせるためのもので、その手だてによって教えに近づく気持ちを起こしてもらえるかどうか、その人の仏性開顕に役立つかどうかを、つねに考えなくてはなりません。(『瀉瓶無遺』289頁)

 「方便」の意味するところが「悟りの境地に近づかせるための手だて」ということであり、“相手の「仏性開顕」に役立つかどうか”ということが、庭野開祖が願われる大きなポイントとなるのではないでしょうか?
 その「方便」というに言葉に、「ニュー(新しい)」という言葉を冠した「ニュー方便」とは何か。それは、《相手の仏性開顕に役立つ、新しい手だて》といえます。

〇とりわけお釈迦さまは、真の自己、すなわち仏性の開顕をいかにして行うかを、ご生涯かけて説きつづけられました。(中略)
 部屋の暗さに不満を言う前に、自分からすすんで窓を開けようではありませんか。お釈迦さまの教えを聞いた私たちが、すすんで人びとの心の窓を開けようではありませんか。無明の闇に、仏の教えという灯(ともしび)を高く掲げようではありませんか。そして、それこそがみなさん自身をも、幸福な、安穏の境地に導くものであることを、かさねて申しあげたいと思います。(『瀉瓶無遺』339頁)

 自分の心の窓、人さまの心の窓、それらをすすんで開けていく。まさに自他の「仏性」の開顕であります。そして、「仏の教えの灯を高く掲げる」とは、“すべての人に仏性あり=一切衆生悉有仏性”というお釈迦さまの真精神を、ご縁のある人に力強く伝えていくことと思わせて頂きます。

 私ども仙台教会の近藤雅則教会長は、『法華経』の大眼目である「仏性礼拝行」を、“相手を認めて・ほめて・感謝する”という言葉でおきかえ、今もっとも大切な私たちの実践として示しています。
 まさに、「自他の仏性開顕に役立つ、新しい手だて」の一つといえましょう。

 自らを含めたすべての人が持つ仏性の開顕のため、“今”という時代に最もふさわしい、自他共に救いに至る「方便」を見つけ出していく。そのことが「ニュー方便」といえるかもしれません。

 ※今後シリーズの中で、仙台教会の会員の皆さんの思い、実践、体験等も掲載していく予定です。

文責:仙台教会ホームページ編集担当

(注1)はじめに(『瀉瓶無遺』3ページ1行目)
 私の八十八歳の米寿を期して著した「瀉瓶無遺」とい、この書名こそが私の気持ちを如実に語ってくれていると思うのです。「瀉瓶無遺」という四文字の意味は、瓶(かめ)の水を一滴も残さずつぎの瓶へ注ぎ移すように、仏教の神髄をつぎの時代の人びとに余すことなく正しく伝えることの大切さを教えた言葉です。私の真意を理解していただけましたら、これに過ぎる幸せはありません。

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